遷延性意識障害の日常のケア
家族がある日、突然交通事故で遷延性意識障害となり、病院に入院している間は良いのですが、3カ月経つと転院か自宅療養を余儀なくされます。
多くの方が日常的なケアができるかの不安があり、病院や療養施設への転院を希望されますが、自宅で介護をする選択をする方もいます。
「本当ならば自宅で介護する方が、遷延性意識障害になっている家族も回復してくれるかもしれない…」と思い、病院か自宅かで心が揺れ動いている患者家族も多いと思います。
ここでは、主に自宅療養時の遷延性意識障害の患者への日常的なケアについて説明します。
医療的なものから一般的なものまで幅広い
遷延性意識障害の患者は排尿障害があるため、おむつを使うのがほとんどで、1日数回のおむつ交換が必要になります。
患者によっては尿道カテーテルなどで排尿を促したり、便秘時には浣腸や指による掻き出しをする必要があります。
また、遷延性意識障害の患者は自律神経の乱れがよくみられるため、突然の発熱や発汗があることがあります。
そのため、体温管理と室温管理は意外と重要で、患者家族の起床と就寝時だけでなくこまめな体温測定をした方が良いです。
食事の形態は、「チューブで直接胃に流し込む」「点滴」「胃瘻」など種類がありますが、どれも一長一短があり、チューブ式は食道が傷ついたり誤って気管に挿入したりする危険性があります。
点滴や胃瘻も、注射したところや胃瘻口の衛生管理が必要になります。
あと、床ずれを防ぐために一日に数回の体位変換が必要になります。
現在は体位変換がしやすい電動医療ベッドもあり、そうでなくても抱き枕やクッションを数種類使えば女性でも体位変換をしやすくなります。
他には、投薬の管理です。
遷延性意識障害用の処方と言うものはないため、糖尿病や高血圧などもともとの持病がない場合には、投薬がない場合があります。
しかし、感染症のリスクがあるため抗生物質や、整腸作用のある薬が処方されることもあるので、投薬には慣れておく必要があります。
また、遷延性意識障害であっても新陳代謝がありますので、健常者と同じく汗をかいたり垢がでます。
清潔に保つために蒸しタオルで体をふく清拭や、ドライシャンプーによる頭髪の洗浄が必要になります。
これを怠ると皮膚病になる事もあり、日常的な清拭に加え、自動車による出張入浴などの介護サービスで入浴をすると良いです。
あと、忘れがちなのが口腔ケアです。
通常の食事が出来ないため虫歯の心配がなさそうに思いますが、清潔に保たないと虫歯になります。
遷延性意識障害の患者がよくなる症状に、ドライマウスがあります。
寝ているため口が開きっぱなしなのに、水やお茶を飲まないため唾液が足りず乾燥してしまうことがあります。
ひどい場合には、口の中にカビやコケが生えた事例があり注意が必要です。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
遷延性意識障害で口から食事をしない場合でも、口内の洗浄を怠ると口内の細菌が増えたり、カビが生えたりするため、毎日の口腔ケアが必要である。
遷延性意識障害の治療法には、電気的な刺激を脳に与えるものがあり、脊髄後索電気刺激が代表的なものである。
現在の医療制度では、同一の病院で入院するのは3ヶ月が限度である。遷延性意識障害患者の入院施設が必要である場合、前もって転院先を探しておくと安心である。
遷延性意識障害を発症した人の5割は交通事故が原因である。これは、頭部や胸部を強打して脳に深刻なダメージを受けて脳の機能を失うためである。
遷延性意識障害患者の中には、人工呼吸器が必要となる人もいる。人工呼吸器が必要な遷延性意識障害患者の自宅介護は、かなり重篤なレベルとなるので、それを踏まえて家族は検討する必要がある。