遷延性意識障害患者の口内洗浄が必要な理由とは
遷延性意識障害患者の栄養摂取は、患者の意識がないことが多いため、口腔や鼻腔からのチューブによる栄養摂取か、胃ろうによる栄養摂取が中心となります。
それゆえに、「口で食べ物を噛んで食べる」「口に飲み物を含んで飲む」という行為がないため、遷延性意識障害患者のご家族の中には、医師から「口の中の洗浄を毎日してください」と言われて、「物を食べていないので、歯を磨く必要もないのでは?」とびっくりされる方もいます。
毎日、正しい歯磨きをしているきれいな口の中にでも細菌は1000億匹ほど生存し、歯を全く磨かない人になると1兆匹にもなります。
これほどの多くの細菌がいるにもかかわらず、なぜすぐに病気にならないのかというと、口内で分泌される唾液が細菌を押し流し、胃の中の強酸で死滅させたり、免疫システムで細菌をやっつけているからです。
唾液が出ることが、口の中を清潔に保つ秘密なのはわかってもらえたかと思いますが、その唾液が一番出るのは、食事、つまり物を噛んでいる時になります。
しかし、遷延性意識障害患者は噛むという行為ができず、唾液が不足がちとなるため、毎日の口の中の洗浄が必要となるのです。
口の中のカビにも注意
もし、遷延性意識障害患者の口の中の洗浄を怠ると、口内細菌が増殖し、歯周病や心筋梗塞などのリスクが高まると言われています。
ですが、それ以上に発症しやすいのが、「口内のカビ」になります。
「いくらなんでも口の中にカビなんて」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は口の中には常在菌のカンジダ菌というカビ菌がいます。
カンジダ菌は健康な人の口の中にもあり、遷延性意識障害患者でなくても口の中にカビが生えることがあります。
普通カンジダ菌は唾液や歯磨きにより増殖しないため、口の中にはいるがカビになるまで成長しません。
しかし、歯磨きを怠ったり唾液が不足したりすると、カンジダ菌は爆発的に増えて舌の上を中心に白いカビとなって現れます。
さらに厄介なのが、カンジダ菌は唾液が少なくなると粘膜に張り付きやすくなるため、ほとんどが粘膜で構成されている口の中はカンジダ菌の温床となってしまいます。
カンジダ菌が増殖すると口臭が強くなったり、口の中が腫れたり、ただれたりするだけでなく、インフルエンザや肺炎などの細菌の2次感染も懸念されます。
遷延性意識障害患者の口腔ケアは、健康に直結するため、重要な介護であると言えます。
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遷延性意識障害患者の中には、人工呼吸器が必要となる人もいる。人工呼吸器が必要な遷延性意識障害患者の自宅介護は、かなり重篤なレベルとなるので、それを踏まえて家族は検討する必要がある。
遷延性意識障害であっても、医学的にリハビリは有効と考えられており、音楽療法やアロマ療法など様々な種類がある。
遷延性意識障害患者が長期入院するには、医療制度から難しい面があるが、長期入院を実施している医療療養型病院もわずかながらにある。
職業介護人による遷延性意識障害患者へのケアは、条件が緩和されたこともあり、できる項目が増えたが、医療行為に抵触するためできない項目もある。
遷延性意識障害の意識の回復は、目線や小さな変化により気づくことが多いので、介護人は観察力が必要となる。