脊髄損傷となった場合に起こる排尿障害について
交通事故で脊髄損傷を負ったと聞くと、『下半身麻痺で歩けない』といった運動障害が思い浮かびますが、脊髄損傷で起こる障害は様々なものがあります。
特に排尿障害は脊髄損傷を負った際に現れやすいです。
排尿のメカニズムは、膀胱は全体の筋肉を緩めて尿が溜まりやすくし、脳に『膀胱に尿がないので受け入れOKです』という信号を脊髄を通して送ります。
そうすると脳は、『尿が漏れないように排尿口の括約筋を閉めろ』という命令を脊髄を通して行います。
膀胱に尿が溜まった際には、膀胱から『尿が溜まった』という尿意が、脊髄を通して脳に伝わります。
そして脳は適切な時に『括約筋を緩め膀胱の筋肉を縮めて尿を排出しろ』と、脊髄を通して膀胱と括約筋に命令をして排尿されます。
つまり、排尿を行う際には、脳と膀胱と括約筋が脊髄を通した情報のやり取りが必要なのですが、脊髄損傷でこの連絡系統に不具合が起こると、排尿障害が起こります。
脊髄損傷による排尿障害
排尿障害となる大元の原因が脊髄損傷の場合、尿を漏らしてしまう尿失禁と逆に尿が出ない排尿障害の2通りがあります。
尿が出ないタイプの排尿障害では、『括約筋が弛緩しないため、尿が出ない』というのが大半なのに対して、尿失禁の場合『膀胱の筋肉が弛緩せず、尿を貯めておけない』、『括約筋が緊張せず尿が出っぱなしになる』、『尿意を感じないので、膀胱が限界以上に尿を貯めてしまい漏らしてしまう』と様々なタイプがあります。
共通しているのが、脊髄損傷のため自己でコントロールできないという点です。
脳では『排尿したい』、『排尿したくない』と思っても、脊髄損傷でその命令を伝える通路が分断されているため、膀胱や括約筋は勝手な行動をしてしまうのです。
そのため、脊髄損傷で排尿障害が起こった場合には、日常的なケアが必要になってきます。
排尿が出来ないタイプの排尿障害ならば、尿道にカテーテルを入れて強制的に排出する必要があります。
尿失禁の場合には、吸水ナプキンやおむつの使用、水分の摂取の制限などが必要となります。
排尿障害は下半身麻痺などと違い、一見すると障害が分かりにくい事もあり『内部障害』とも言われています。
脊髄損傷を負っていると診断が下りていても、排尿障害のみの症状で、その症状が軽度である場合には、加害者側と後遺障害の補償について争われることがあります。
特に高齢の方が交通事故で脊髄損傷を負い、排尿障害が現れた場合には『交通事故で負った脊髄損傷が原因なのか、加齢が原因なのか?』が後遺障害認定において焦点となることがあります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故による脊髄損傷は、症状に応じて後遺障害等級が分かれる。慰謝料に大きく影響する部分であるため、具体的な症状と等級を照らし合わせ、把握するのが望ましい。
脊髄損傷と一口にいっても、必ず上位の後遺障害等級に当てはまるとは限らない。当該症状に応じ、認定される等級は異なり、等級が高いほど慰謝料の額にも関わる。
脊髄損傷では症状固定までに時間がかかることも多いが、後遺障害等級認定の際には、症状固定から示談まで2年の猶予があるので、無理に急がなくても良い。
交通事故で受傷した脊髄損傷は、後遺障害等級の認定を受けられれば高額の慰謝料を見込める。今後の人生を大きく変える怪我であるため、納得いく金額を受け取るために、弁護士に相談するべきである。
脊髄損傷の中でも中心性脊髄損傷は、脊椎の骨折を伴わないので診断がむずかしい傷病である。正確な診断をしてもらうために、神経学的検査を受けると良い。