脊髄損傷なのに骨に損傷が見つからない「非骨傷性頚髄損傷」
高齢化が進み脊髄損傷の中でも、『非骨傷性頚髄損傷』が増えつつあります。
非骨傷性頚髄損傷は文字通り、脊椎が骨折したり脱臼していないにもかかわらず、頸部の脊椎内の脊髄が損傷してしまうケースです。
割合的には高齢者が多いのですが、これは加齢により頸椎が変形したり、もろくなったりして、脊椎の強度が十分でないため脊髄を守りきれないというケースと、加齢などにより骨が変形して脊椎の内部に突起ができ、交通事故のショックなどによりその突起が脊髄を傷つけてしまうというケースなどがあります。
軽い追突程度の交通事故で、外傷などがなく首に軽い違和感のほかに足のしびれなどの症状を、単なるむち打ちと判断されてしまったが、何か月たっても足のしびれが収まらないので、精密検査をしてやっと脊髄損傷が発見されるといったケースもあります。
「軽い衝突程度で脊髄損傷になるのか?」という疑問もあるかもしれませんが、文部科学省所管の独立行政法人科学技術振興機構の電子ジャーナルによると、墜落事故で非骨傷性頚髄損傷となった人の内訳で、3m以下と3m以上のグループでは脊髄損傷の重篤者の割合はほぼ変わらないことからも、わずかな衝撃でも非骨傷性頚髄損傷、しかも首から下が全く動かなくなる重篤なケースもあり得るのです。
むち打ちと非骨傷性頚髄損傷の違い
交通事故に遭って病院に搬送された場合は、レントゲンやCTなどの検査があるため、脊髄損傷の箇所が画像でうつっていれば、非骨傷性頚髄損傷との診断がおります。
しかし、「単なるむち打ちだし、明日にでも病院に行けばいいか。」と自発的に行った場合などは医師がレントゲンを省いてしまったり、レントゲンなどの検査施設がない診療所や整体院で触診のみでむち打ちと診断されたりと、脊髄損傷の発見が遅れることがあります。
むち打ちと非骨傷性頚髄損傷の違いはいくつかあります。
まず、むち打ちは頸部のねん挫という意味で使われることが多いので、3日~2週間程度で痛みがなくなり治癒します。
1か月以上痛みが続く場合には、ねん挫以外の原因が疑われるため、脊髄損傷も考えてレントゲンを含む再検査をしてもらった方が良いでしょう。
一番の違いは、しびれや痛みが頸部だけでなく足などにも出て、しかも交通事故直後から発症して継続する点です。
脊髄は損傷すると即症状が出て自己回復しないため、時間とともに症状がなくなるという事はありません。
交通事故のショックで一時的にしびれや違和感が出ることがありますが、ほとんどの場合は時間とともに治っていくことが多いです。
しかし、脊髄損傷の場合は時間が経ってもしびれや違和感が治らず、損傷個所によっては排尿障害、神経の伝達障害により怪我などがない場合にも激しい痛みを感じたり、熱さや冷たさを感じないといったこともあります。
非骨傷性頚髄損傷の場合には、発見が遅れて加害者側がむち打ちでしか補償を認めず、被害者側と示談でもめるケースもあるため、脊髄損傷を分かった時点で弁護士に相談をした方が良いでしょう。
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脊髄損傷の症状の中にはめまいなどもあり、更年期障害と誤診されることもあるので、交通事故後にめまいの症状が出た場合は精密検査をした方が良い。
交通事故が原因で脊髄損傷となったのに、加害者側からむち打ちなのではと言われたら、診断書や検査資料で脊髄損傷を立証して正当な賠償金を請求するべきである。
脊髄は老化による変形や損傷があり、交通事故後に脊髄損傷が見られても、交通事故に起因するものと認められず、診断が下りない事がある。そのような場合には交通事故に精通した弁護士に相談した方が良い。
交通事故で脊髄損傷を負った場合、症状固定の時期が問題となる事が多いが、症状固定の時期は医師に、保険会社との交渉は弁護士に任せるとよい。
脊髄損傷の治療で、保険を適用して再生医療を受ける場合には、期限や条件があるため、治療を希望する場合には速やかに手続き等を進める必要がある。