脊髄損傷は交通事故後、いつ頃に症状固定すれば良いの?
脊髄損傷は現在の医療では治す術がなく、残っている機能を最大限に生かしながら容態を悪化させないことが重要になります。
治らないと分かっているのであれば症状固定もすぐできるのでは、と思われがちですが、実は脊髄損傷のような重い障害ほど、交通事故から症状固定までには時間がかかります。
症状固定とは「これ以上治療を続けても良くならない」と医師が判断することを指しますが、不完全損傷の場合にはリハビリによって多少なりとも回復が見込めるケースがあります。
そのような場合、医師はなかなか症状固定せず、交通事故から症状固定までに2年ほどかかることもあるのです。
症状固定によって変化するのは、請求できる費用の内容です。
症状固定前に請求できるのは「傷害部分」であり、実際にかかった治療費や交通費、そして休業損害や通院に対しての慰謝料などです。
一方、症状固定後に請求するのは「後遺障害部分」で、後遺障害に対する慰謝料、そして本来怪我を負わなければ得られたはずの収入となります。
症状固定は損害賠償上の治療終了をも意味しており、症状固定後に通院やリハビリに通ったとしても、その費用を加害者側に請求することはできません。
脊髄損傷の症状固定のタイミングは?
保険会社は治療費の支払いを抑えたいので、交通事故発生からある程度の期間が過ぎたところで「そろそろ症状固定をしてください」と言ってきます。
しかしまだ治療を続けたいという希望があり、担当医も「通院を続けるように」と言っている場合、無理に症状固定を急ぐことはありません。
症状固定後に開始する損害賠償金の示談交渉の期限は、交通事故発生から3年です。
脊髄損傷の治療が1年、2年…と続くと「期限が切れてしまう」と焦るかもしれませんが、後遺障害等級認定を受けられた場合、示談の期限は「症状固定後から2年」となります。
後遺障害と認められる脊髄損傷で治療を2年続けて症状固定した場合、損害賠償の請求期限は交通事故発生から4年目ということです。
「症状固定してしまうと治療費が支払われなくなるから」と、症状固定に対し不安を持つことがあります。
一方で、住宅のリフォーム代金や諸々の費用を損害賠償として早く請求したい、という都合もあることでしょう。
症状固定は医師が判断するものではありますが、そのタイミングを相談することはできます。
症状固定することでのメリット・デメリットを考慮し、何を優先事項とするのかはケースバイケースです。
自分の場合はどうするのがベストなのか、交通事故処理に詳しい弁護士に相談してみることで、納得できるタイミングを知る助けになるかもしれません。
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脊髄損傷の中でも中心性脊髄損傷は、脊椎の骨折を伴わないので診断がむずかしい傷病である。正確な診断をしてもらうために、神経学的検査を受けると良い。
交通事故が原因で脊髄損傷を負った場合、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうべきである。
脊髄損傷では麻痺がある部分に痛みやかゆみなどを感じる幻肢痛という症状が出ることが多くあるため、幻肢痛で日常生活に支障が出る場合にはその分を含めた損害賠償請求をした方が良い。
交通事故で脊髄損傷を負った場合、症状固定の時期が問題となる事が多いが、症状固定の時期は医師に、保険会社との交渉は弁護士に任せるとよい。
脊髄損傷の後遺障害等級認定が非該当になるケースには、客観性の無さや一貫性の無さなどの傾向が見られる。非該当の場合にもポイントをおさえた対応によって賠償金増額の可能性はある。