脊髄損傷で再生医療を保険適用で受けるためには
一昔前までは、脊髄損傷は治療不可能だと言われていました。
身体の部位によっては怪我を負っても自己再生、もしくは移植などで機能が再生するのですが、脊髄は損傷をしてしまうと自己治癒することがないため、治療方法がないとされてきました。
しかし、近年ではiPS細胞など、『再生医療』と言われる医療分野の進歩は目覚ましく、脊髄損傷の治療も可能となりつつあります。
一例ですが、首から下の重度の麻痺がある脊髄損傷患者が、自身の脊髄から培養した幹細胞による再生医療で、数か月後には歩行できるまでの回復をしたケースもあります。
交通事故で脊髄損傷を負った患者や患者家族からすると、「再生医療を受ければ、脊髄損傷が治るのではないか?」という希望が持てると思いますが、同時に「再生医療は治療費が莫大にかかるのでは?」と、悩まれることだと思います。
再生医療と聞くと「自由診療だから、医療費だけでも数千万かかると聞いた。」と考える方もいますが、実は再生医療は特定の疾病には保険適用されます。
脊髄損傷も『条件及び期限付き承認』で、保険適用で治療ができます。
再生医療が受けられる条件とは?
脊髄損傷の再生医療は『条件及び期限付き承認』であるため、脊髄損傷患者全員が受けられるものではありません。
2018年12月に承認された内容は、『脊髄損傷に対する治療用の再生医療等製品「ステミラック注」が、条件及び期限付き承認を受けました。受傷後31日以内を目安に骨髄液採取を実施することが可能な受傷後間もない脊髄損傷の患者さんを対象とし、自分の骨髄液を採取して培養した間葉系幹細胞を点滴で体内に戻すことで症状(運動麻痺や感覚麻痺など)の改善を目指す製品です。』となっています。
つまり、交通事故で受傷してから31日以内に骨髄液採取を開始しなければならないのですが、実際には検査などが最低1週間は必要となってきますので、おおよそ3週間以内には再生医療を行っている病院で診察を受けなければならないということになります。
再生医療は京都大学病院や札幌医科大学など、限られた病院でしか行われておらず、『交通事故に遭い救急車で運ばれた病院が、再生医療を扱っていた』というのは、かなり限られています。
そのため、再生医療を望む場合には、担当医が再生医療を行っている病院に診察を打診して、そちらの病院から許可が出て初めて診察してもらえるというのが、通常の流れになります。
担当医師が再生医療に詳しく、また治療に積極的である場合には、転院の可能性は高いですが、そうでない場合には『気が付いたら31日を過ぎていて、再生医療が適用されない』というケースがあります。
また、脊髄損傷患者が高齢であったり、脊髄損傷以外の受傷が重く転院できる状態でないといったケースもあり、患者の希望が通るとは限りません。
もう1つの問題が、治療費の問題です。
病院によっては『再生医療は自由診療』と思い込んでいて、再生医療を反対するところもあります。
また、保険会社も『再生医療は自由診療なので、治療費は支払いません。』と言ってくることもあるので要注意です。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
脊髄損傷の入院期間は、国が定めた規則により例外と認められない限り6カ月を超えると入院基本料の15%が自己負担になるため、ほとんどの人が6カ月以内に退院する。
交通事故の後日に脊髄損傷が判明しても、交通事故との因果関係の証明が難しいケースもあるため、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷となった患者の約半数は交通事故が原因だが、脊髄に血液を送る血管の血流が途絶えて脊髄に血液が流れなくなることが原因でも脊髄損傷は発症する。
保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷による損害賠償の内訳は、大きく分けて積極的損害と消極的損害の2種類があり、もともとの損害に対する補償の性質が異なる。