重篤な障害があっても症状を軽くみられる不完全脊髄損傷
脊髄損傷を負うと、下半身麻痺が起きて歩行ができないと考える方が多くいます。
しかしながら、脊髄損傷は損傷した脊髄の箇所により麻痺の出る位置が変わってきます。
損傷個所が脊髄上部である頸部に近ければ近いほど、麻痺などの症状が強く広範囲に出てきます。
脊髄は脳から尾てい骨まで脊椎を通っていますが、小指ほどの太さから下に行くほどだんだんと細くなっていきます。
そのため、一口に脊髄損傷と言っても、すっぱりと脊髄が切断してしまう『完全脊髄損傷』と、全て切れておらず一部だけが断裂している『不完全脊髄損傷』があります。
完全脊髄損傷の場合、MRIやCTで丁寧に検査をすれば断裂個所が見つかるため、『脊髄損傷』の診断がおりやすいのですが、不完全脊髄損傷では断裂個所が微小であった場合、検査でも発見されづらくなります。
完全脊髄損傷の場合、肛門の括約筋が麻痺してしまい排便がうまくできないといった症状が出るため、脊髄損傷を疑って医師も検査しますが、不完全脊髄損傷の場合は排便には支障がない、もしくは軽微な悪化にとどまる事もあり、見過ごされやすいことがあります。
不完全脊髄損傷患者が抱えるジレンマ
不完全脊髄損傷患者は、『脊髄損傷である』という診断がおりにくいというケースがあるのですが、診断が下りたとしても『不完全』という言葉から、周りから軽症と受け取られてしまう事があります。
脊髄が完全に断裂していなくても、麻痺などの症状が重篤なケースは多々あります。
しかしながら、無理解の周辺の人から「完全に切れているわけじゃないから大丈夫でしょ?」、「足に麻痺があるけど、完全脊髄損傷の人からしたらマシじゃない。」といった心無い言葉をかけられることがあります。
交通事故の後遺障害等級認定は、完全脊髄損傷・不完全脊髄損傷にかかわらず、発症している症状の重篤さで決められるものなのですが、そういった周囲の声や、また真面目な人ほど『不完全脊髄損傷なのだから、自分さえしっかりすれば動けるはず』と自分で自分を追いつめてしまい、医師の問診にも症状を軽く申告してしまうケースまであります。
弁護士の立場からすると、自分の脊髄損傷の症状を軽く申告することは一利もありません。
保険会社は脊髄損傷の後遺障害慰謝料の支払いを抑えるために、被害者の症状を軽くしたがるのですが、この場合、知らず知らずに被害者自身が保険会社の手助けをしていることになるからです。
交通事故で治療を受ける際には、冷静な第三者視点で自分の症状や障害による日常の不便な点などを、医師に告げるようにしましょう。
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脊髄損傷の後遺障害等級認定が非該当になるケースには、客観性の無さや一貫性の無さなどの傾向が見られる。非該当の場合にもポイントをおさえた対応によって賠償金増額の可能性はある。
交通事故により脊髄損傷となった場合の後遺障害等級は、7段階に区別される。脊髄損傷の後遺症が軽度な症状の場合、第12級など、下位の等級として認められる可能性がある。
交通事故での脊髄損傷の診断書は、医師しか作成できないため、患者は医師と日ごろから円滑な連携をとる必要がある。
交通事故の規模が比較的軽微であっても脊髄損傷を受傷することがあるが、加害者側と後遺障害認定において揉めることがあるため、もめごとが起こった際はすぐに弁護士に相談した方が良い。
交通事故による脊髄損傷において後遺障害等級が必ずしも正しく認定されているわけではない。弁護士に依頼して異議申し立てを行えば、適切な対策が立てられるため、まずは弁護士に相談するのが望ましい。