脊髄損傷において重要視されるADLとQOLについて
交通事故により負った脊髄損傷で麻痺があらわれ、日常生活に支障がある場合でも、ほとんどの場合で自宅での療養を余儀なくされます。
現在の健康保険制度では、治療のための入院ならば90日、リハビリを含む場合は180日が最大入院日数になるため、それを過ぎると転院か自宅療養の2択を迫られることになります。
また、療養施設の入所も通常ならば1年半、最長で3年と、従来の最長5年よりも大幅に短縮されてきているため、自宅での療養の割合はますます増えていくと思われます。
脊髄損傷患者が自宅で生活する際に、病院のリハビリ担当者から言われることの中に、ADLとQOLがあります。
ADLとは「Activities of Daily Living」を略した言葉で、日本語では「日常生活動作」と言われています。
主に日常生活の行動をさしており、食事や入浴・排泄、歩行や移動のほか、自分の薬の管理をしたり、金銭管理などもADLに含まれます。
介護保険制度では、ADLに基づいて『要介護1』などのランクを決めるため、重要視される項目であります。
生活の満足がQOL
QOLは「Quality of Life」を略した言葉で、日本語に訳すと「生活の質」といったところです。
ADLは主に身体的な障害の度合いで出来ることを計っていますが、QOLは精神的な満足度という、ある意味見えづらいものを数値化したものになります。
もし、まったく同じ症状の脊髄損傷患者がいた場合、介護者が誰もおらず自宅も段差だらけ、トイレも和式で日常生活がしづらいところで生活している患者と、配偶者のほかに訪問ヘルパーが定期的に来て、自宅も車いすに対応したフラットなバリアフリーの作りで、トイレやお風呂なども下半身まひ対応の設備が整っているところで住んでいるのでは、QOLの満足度が変わってくるのは容易に想像できると思います。
交通事故で加害者側と示談交渉する際に、保険会社はADLに基づいた損害賠償金を計算してきます。
いわば、脊髄損傷で最低限生活できるレベルの補償しか提示してきません。
被害者側からすれば、QOLも満足できるレベルの補償を求めたいと思うのは自然な事なのですが、保険会社から「それは過剰な要求です。」と切り捨てられるケースが多くあります。
弁護士目線から見れば、過剰な要求どころか判例でも認められた正当な要求であるものも多く、逆に弁護士に相談をされて「そんなものまで請求できるのですか?」と驚かれることも多いため、保険会社と示談を終えてしまう前に示談内容について弁護士に相談をした方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故による脊髄損傷で弁護士に依頼する際には、契約書で依頼の範囲や内容をよく確認する必要がある。
交通事故による脊髄損傷の損害賠償金には、交通事故日から遅延損害金が課されるが、一般の示談交渉では支払われることがほとんどないため、弁護士から請求をしてもらうと良い。
脊髄損傷となった患者の約半数は交通事故が原因だが、脊髄に血液を送る血管の血流が途絶えて脊髄に血液が流れなくなることが原因でも脊髄損傷は発症する。
脊髄損傷となった交通事故の示談を弁護士に依頼する利点には、損害賠償金の増額や法的なアドバイスが受けられる等があるため、弁護士を雇うことも検討してみると良い。
自賠責保険の運用変更で、以前から脊髄損傷でまひがあっても、交通事故で新たにしびれが生じた場合には、弁護士に示談交渉を依頼すれば新たなしびれに対する分の請求をすることができる。