元々脊髄損傷でまひが…新たに事故でしびれが出た場合は?
2018年12月24日から自動車損害賠償責任(自賠責)保険が、すでにまひがある場合でも新たに生じた体のしびれなどを後遺症として認定するよう運用を変更しました。
これ以前は、例えば脊椎下半身まひの障害を持つ方が、交通事故による脊髄損傷などで首や腕などにしびれが出た場合でも、『同じ神経系統の障害ですでに下半身に障害があるため、新たに首や腕のしびれに対する保険金の支払いはしない』とされていました。
脊髄損傷を負った側にすれば、新たなしびれは交通事故が原因であることが明らかである場合でも保険金が支払われず、ほぼ泣き寝入りが常態化していましたが、2016年の東京高裁の判決を受けて今回の運用変更となりました。
健常者が交通事故でしびれが出た場合には保険金が下りるのに、脊髄損傷で下半身まひがあった場合、その他の場所にしびれが出ても保険金が下りないという不条理が是正され、障害者にとっては福音になったと言えます。
現場レベルの浸透は疑問視
すでに神経系に障害がある患者が交通事故により悪化した場合でも、保険金を請求できる画期的な運用変更だと言えるのですが、保険会社としては保険金の支払額の増加を招くため、現場レベルでの徹底運用の浸透は疑問視せざるを得ません。
今回の運用のもととなった裁判では、下半身まひの脊髄損傷患者が交通事故で首や腕など別の部分にしびれが出たため、認められやすかったとも言えます。
例えば、もともと左ひざ下に軽いまひがあり、交通事故以降に左足全体にしびれが出た場合はしびれが出た場所がまひの部位と近いため、保険会社の示談担当者から「以前からのまひが悪化しただけ。」「加齢によりまひが進行して全体にしびれが出た。」と、言い含められてしまい、弁護士ではなく個人が交渉した場合は低い提示額のまま示談交渉を終えかねてしまいません。
弁護士であれば、新たなしびれに対する分の請求はもちろんの事、そのほかに対する補償の金額も正当であるか精査したうえで保険会社に請求をするため、個人で示談交渉をするよりもはるかに有利である場合が多いです。
被害者ではあるが真面目な人柄であるほど、『自分にも悪いところがあったから』『もともと左足にはまひがあったから、軽いしびれが増えたくらいならば…』と、交渉相手の保険会社に意見が言いにくいという事がありますが、弁護士ならば依頼人の話を細かく聞き取って保険会社や加害者と交渉しますので、自分の意見が反映された示談結果になりやすいと言えます。
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脊髄損傷では麻痺がある部分に痛みやかゆみなどを感じる幻肢痛という症状が出ることが多くあるため、幻肢痛で日常生活に支障が出る場合にはその分を含めた損害賠償請求をした方が良い。
脊髄損傷でまれに上半身麻痺が起こることがある。珍しい症例のために脊髄損傷との因果関係に気付かない医師もおり、示談が不利になるケースもあるため、交通事故に詳しい弁護士に相談をするとよい。
脊髄損傷の損害賠償請求の示談は交通事故から3年が時効とされているが、後遺症がある場合には、症状固定日から3年が時効となる。
保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
交通事故の後日に脊髄損傷が判明しても、交通事故との因果関係の証明が難しいケースもあるため、弁護士に相談をした方が良い。