脊髄損傷では後遺障害等級によって慰謝料は変わる?
脊髄は、一度損傷すると自然に再生することはなく、今のところ人工的な再生方法も発見されていません。
そのため、脊髄損傷時の症状がそのまま後遺障害になると考えられます。
厚生労働省の通達では、脊髄損傷の麻痺の程度は「高度」「中等度」「軽度」に分類されていますが、後遺障害等級認定の基準は「麻痺の範囲」「麻痺の程度」を中心とし、さらには麻痺の程度により介護の必要度を考慮して、細かく分類されます。
脊髄損傷の症状はその損傷個所・程度により幅が広いため、後遺障害等級において重篤な症状を認める1級1号から、軽いものでは12級13号まであり、特徴として足の麻痺に関わる障害であるほど後遺障害等級は高い等級となっています。
<1級1号>
・高度の四肢麻痺 ・対麻痺(両足の麻痺)
・中等度の四肢麻痺もしくは対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣などで常時介護が必要
<2級1号>
・中等度の四肢麻痺
・軽度の四肢麻痺もしくは中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣などで随時介護が必要
<3級3号>・軽度の四肢麻痺 ・中等度の対麻痺
<5級2号>・軽度の対麻痺 ・片方の足に高度の単麻痺(手足のどれか一つの麻痺)
<7級4号>片方の足に中等度の単麻痺
<9級10号>片方の足に軽度の単麻痺
<12級13号>その他の軽度な麻痺など
脊髄損傷の慰謝料、後遺障害等級による事例
では、後遺障害等級によってどれぐらいの慰謝料を受け取ることとなるのかを見てみると、交通事故による後遺障害のなかでも比較的高額となる傾向があり、1,000万円~3,000万円程度の慰謝料が一般的です。
参考として、過去の後遺障害慰謝料の判例を障害等級とともに紹介します。
・平成17年 東京地裁 完全対麻痺等 (1級) 2,900万円
・平成18年 大阪地裁 四肢不全麻痺等 (5級) 1,400万円
・平成18年 名古屋地裁 四肢麻痺(知覚麻痺)等(1級) 2,800万円
・平成20年 東京地裁 完全対麻痺等 (1級) 2,800万円
・平成20年 大阪地裁 両下肢不全麻痺等 (3級) 1,900万円
損害賠償請求では、慰謝料の他に逸失利益も大きな割合を占めます。
モデルケースとして、30歳、年収500万円の男性が交通事故で脊髄損傷を負った場合の金額の相場を紹介します。
1級 慰謝料2,800万円 逸失利益9,191万円
5級 慰謝料1,400万円 逸失利益7,261万円
9級 慰謝料 690万円 逸失利益3,216万円
交通事故の示談交渉はケースバイケースですが、「金額が低すぎるのでは」と不安になる前に、交通事故処理に詳しい専門の弁護士に相談しておくと安心です。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故で受傷した脊髄損傷は、後遺障害等級の認定を受けられれば高額の慰謝料を見込める。今後の人生を大きく変える怪我であるため、納得いく金額を受け取るために、弁護士に相談するべきである。
交通事故により脊髄損傷となった場合の後遺障害等級は、7段階に区別される。脊髄損傷の後遺症が軽度な症状の場合、第12級など、下位の等級として認められる可能性がある。
交通事故による脊髄損傷は、症状に応じて後遺障害等級が分かれる。慰謝料に大きく影響する部分であるため、具体的な症状と等級を照らし合わせ、把握するのが望ましい。
交通事故が原因で脊髄損傷を負った場合、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうべきである。
脊髄損傷の示談交渉における被害者の請求権には時効が存在する。そのため、時効を気にして示談を急ぎそうになるかもしれないが、時効は症状固定をしてから2年間とされているため、焦る必要はない。