障害年金は脊髄損傷患者でも給付を受けられるの?
一家の家計の主たる夫や、共働きで生活を支えている配偶者が、交通事故に遭い脊髄損傷となった場合、脊髄損傷の受傷度によっては将来的な不安を大きく抱えることがあります。
加害者から脊髄損傷の後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ったとしても、将来的に十分な金額ではない可能性もあります。
そのため、「障害年金をもらえるのならば請求しよう」と思う方もいらっしゃいますが、障害年金の手続きは複雑かつ要件が厳しいこともあり、年金事務所で説明を受ける前にあきらめてしまわれる方もいます。
障害年金の要件には、「1.初診日が確定できる」「2.初診日の前々月までの年金保険料納付率が一定以上ある」「3.初診日から1年6カ月経過した日(=障害認定日)時点で症状が障害認定基準の等級に該当し、審査で支給が認められた場合」があります。
つまり、年金保険料を滞納なく納めており、初診日から1年半経った時点での症状が障害認定基準に達していれば、障害年金の給付を受けられる可能性があります。
交通事故で負ったその他の傷病が治癒もしくは症状固定し、リハビリも落ち着いたところで脊髄損傷の症状固定となるのですが、脊髄損傷の場合は可逆的な治癒は現在の医療ではありえないため、初診日(=交通事故による初治療日)から1年半経った時点で申請するというのが一般的な流れになります。
障害年金がもらえない場合も?
一見、重度の脊髄損傷で年金加入者ならば障害年金がもらえそうに思えますが、交通事故の場合、少し勝手が違ってきます。
通常ならば脊髄損傷の度合いによって年金の支給や等級が決まるのですが、交通事故の状況(過失割合等も含む)も精査され、最悪支給されないこともあります。
また、加害者側から損害賠償金を受け取れる場合には、最大2年間の給付停止があります。
他にも、会社を休んだことで健康保険組合から傷病手当金が支給されている(されていた)場合には、厚生障害年金の場合では支給額の調整が行われることがあります。
国民健康保険の場合にはこの調整は行われず、基礎障害金と傷病手当金をあわせて受け取ることができます。
会社の業務中に交通事故に遭った場合、労災が適応されることがあります。
労災保険が適応となり障害年金も受け取る場合には、労災保険が調整されて給付されることになります。
このように、障害年金は障害年金の要件をクリアするのも困難であると同時に、他の給付金や損害賠償と深くかかわりあっているため、「すぐに給付されると思ったのに、2年間待たないといけない」、「今までもらっていた傷病手当金よりもはるかに低い」といったことがありますので、事前に弁護士や社労士に相談をした方が良いでしょう。
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交通事故により脊髄損傷となった場合、損害賠償請求の時効は交通事故日から3年であるが、後遺障害が残った場合は、症状固定をした日から3年というのが判例として残っている。
脊髄損傷を負った後の生活ではADLが重要視されてきたが、昨今ではQOLも重要視されてきており、交通事故の示談交渉もQOLを鑑みた損害賠償請求をするべきである。
交通事故による脊髄損傷で弁護士に依頼する際には、契約書で依頼の範囲や内容をよく確認する必要がある。
交通事故による脊髄損傷の損害賠償金には、交通事故日から遅延損害金が課されるが、一般の示談交渉では支払われることがほとんどないため、弁護士から請求をしてもらうと良い。
脊髄損傷の保険金は、症状の重さにより数十万円から時として億となる事もあるが、個人的に交渉をした場合には、保険会社の基準の最低限に近い金額しかもらえないため、弁護士に依頼をした方が良い。