交通事故による脊髄損傷が症状固定後で分かった場合には?
脊髄損傷の症状で有名なのが全身麻痺ですが、全身麻痺は脊髄損傷の中ではかなり重篤な症状で、実際には症状は多岐に及びます。
手足の麻痺・痛覚や触覚、温感など皮膚感覚の麻痺・尿や便失禁・交感神経の異常による自律神経の乱れ・味覚や嗅覚の鈍麻などがあります。
後遺症で自律神経の異常が出ると、副次的な症状で発汗・のぼせ・めまい・体温の調整異常・身体のだるさなどが現れます。
交通事故直後の精密検査で脊髄損傷の箇所が発見できれば、脊髄損傷とそれらの症状を結び付けて治療が行われますが、不完全脊髄損傷の様に小さな損傷であると見逃されてしまう可能性があります。
そのため、「交通事故の後、めまいが良く起こるので脳の精密検査を受けたのだけど、どこにも異常がなく困っている。」というのも、実は脊髄損傷による交感神経の異常が原因というケースもあります。
症状は一過性だと脊髄損傷が見逃されそのまま症状固定してしまったが、どうしても体の異常がおさまらないので専門病院で精密検査をしたら脊髄損傷個所が見つかったといった場合はどうなるのでしょうか?
症状固定後に脊髄損傷個所が見つかった場合は?
この場合、めまいなどの症状などが後遺症として認められているか否かが大きな問題となります。
医師の中には「画像診断では脊髄損傷が認められないが、足に麻痺があるのは画像では捕捉できない微細な脊髄損傷があると考えられる。」と診断をくだす者もおり、その場合には足の麻痺の原因が脊髄損傷であると因果関係がはっきりしたということになるため、影響はまだ小さいです。
しかし、「足に麻痺があるが、足の神経系の問題で馴化・完治する」とされてしまうと、後遺障害認定が軽くなる、もしくは認められない可能性があります。
脊髄損傷は現在の医療技術では不可逆的で完治することができないため、脊髄損傷による症状は馴化はしても完治することはありません。
そのため、後遺障害認定において「脊髄損傷」の診断が下りているかどうかは、大きな要因になります。
もし、症状固定後に脊髄損傷が見つかった場合には、診断書が変わってくるため症状固定をいったん取り消して、新たに脊髄損傷による症状として症状固定の診断書を医師に書いてもらう必要があります。
ただ、脊髄損傷が見つかったから症状固定の取消・変更が出来るかと言うと、示談後であると示談自体を取り消さなければならず、裁判でもかなり難しいケースと言わざるを得ません。
また、示談前であっても、「見つかった脊髄損傷が交通事故によるものなのか?」という問題も生じてくるため、交通事故に精通した弁護士に相談する方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故で脊髄損傷を負った場合、症状固定の時期が問題となる事が多いが、症状固定の時期は医師に、保険会社との交渉は弁護士に任せるとよい。
交通事故の後日に脊髄損傷が判明しても、交通事故との因果関係の証明が難しいケースもあるため、弁護士に相談をした方が良い。
交通事故で脊髄損傷となった場合には、脊髄を横断的に損傷した完全損傷と、脊髄の一部が損傷または圧迫を受けたが、断的な損傷は受けておらず一部の機能を残す不完全損傷がある。
交通事故による脊髄損傷の後遺障害認定を受ける際に、日常生活状況報告書の内容が重要となるので、交通事故に詳しい弁護士のアドバイスを受けて作成をした方が良い。
脊髄損傷の症状固定のタイミングは、患者の回復具合や脊髄損傷の程度、患者家族の経済力などでベストなタイミングが変わるため、交通事故に強い弁護士などに相談をした上でいた方が良い。