脊髄損傷で慰謝料が増額されるケースとはどんなもの?
脊髄損傷に限らず、交通事故の示談では慰謝料の増額が焦点となることがあります。
治療費で支払った金額や、休業補償は休んだ間に対する給料など、その計算の元となる領収書や会社からの証明があるものは「保険会社」「弁護士」双方とも、その証拠を基準とします。
反対に言うと、基準となる数字がはっきり提示されていればいるほど、議論の余地は狭くなることから、弁護士を通して交渉した場合には予定調和の金額に落ち着くことが多いです。
一方慰謝料は、裁判などの判例や過去の何千万件もの前例の積み重ねから、それに当てはめて算出されます。
しかし、交通事故の被害者は画一の人物ではなく、無職の男性もいれば、重役クラスの女性、年金暮らしの高齢者と多岐に亘り、脊髄損傷による後遺症の重篤度により今後の人生の歩み方が大きく変わる可能性も秘めています。
そのため、治療費や休業補償・逸失利益などでは賄いきれなかった損失に対して、慰謝料の上積みでその代わりとすることがあります。
脊髄損傷で慰謝料が上積みされるケース
脊髄損傷で一般的な事例に対して慰謝料が上積みされるケースは、「通常支払われる後遺障害慰謝料では足りない」と裁判所が認めるということが基本となります。
脊髄損傷に限らず、加害者が被害者に対して不誠実な態度をとり続けたり、さらに脅迫行為などを行った場合には、精神的な慰謝料として上積みされることがあります。
また、脊髄損傷患者と特別な関係がある親族がおり、交通事故の後遺症により通常考えられる関係の悪化や支障がある場合です。
例では、長期にわたる不妊治療の末に得た子どもが、脊髄損傷により寝たきりとなった場合などは本人に対する慰謝料のほかに、「長年の苦労の上で得た子どもで、両親がこの先新たに子をもうける可能性が低く、子どもに関する将来の楽しみを奪われた」という理由から、慰謝料の増額が認められたケースがあります。
他にも、母子家庭で子どもが脊髄損傷となった交通事故では、母親の精神的ダメージの大きさと、介護の重責が認められて、慰謝料が増額されたものもあります。
職業的なものでは、脊髄損傷で腕や指が不自由となったが、被害者が伝統美術の後継者で、他に同一の技術を持っている人間がおらず、実質的にその伝統が途絶えるといったような場合には、裁判では大きく争うポイントとなります。
慰謝料は絶対的に判例通りに収まるものではなく、時流や時代の変化に応じても変わってくるものなので、あきらめずに交通事故に詳しい弁護士に相談をしてみる方が良いでしょう。
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交通事故で脊髄損傷となり後遺症を負っても給料の減額等がない場合、逸失利益が認められないケースもあるため、弁護士に相談をして逸失利益の計算をしてもらうとよい。
交通事故により脊髄損傷を負い、歩行困難となった場合には、移動に必要な杖や車いすの購入費用のほかに、福祉車両や民間救急車などの移動手段についても請求できることがある。
交通事故で脊髄損傷の逸失利益の計算には、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率が使われるが、労働能力喪失率の上昇が認められたり、全く認められないといったこともあり得る。
慰謝料とは、文字通り「慰(なぐさ)め、謝(あやま)るため」に支払うお金で、脊髄損傷の痛みや以前の日常生活を送れなくなった事へのお詫びの気持ちを表す金銭である。
交通事故で脊髄損傷となった場合、生命保険からも保険金が支払われることがあるが、高度障害保険金は支給要件が厳しい場合もあるので、弁護士を通じて保険会社と交渉しても良い。