既往症や持病により、脊髄損傷の保険金が減額される?
交通事故による脊髄損傷の場合、症状によっては、交通事故の後遺症において一番重篤である介護1級が認定されることもあります。
レントゲンやCTなどの画像により脊髄損傷が確認された場合は、一番下の等級でも12級の後遺障害と認められることが多いです。
そのため、交通事故で脊髄損傷となられた被害者の中には、「脊髄損傷個所が見つかっているし、後遺障害認定されて、後遺障害の慰謝料が支払われるのは確実」と勘違いされる人もいます。
交通事故直後の検査で脊髄損傷個所が見つかっても、後遺障害の慰謝料が減額されたり、時には1銭も支払われないといったこともあり得ます。
このような減額は素因減額によるものであることがあり、裁判でも認めている要因でもあるため、保険会社の示談交渉で大きくもめる火種となることがあります。
減額が認められるケース
素因減額が認められる原因で一番多いものは、以前から既往症や持病で脊髄損傷に類似した症状が出ていたケースです。
交通事故で脊髄損傷となる前から、肩に痛みや手にしびれがあった場合には、その分は差し引いて損害賠償金の金額が計算されます。
例えば、交通事故以前から五十肩で整形外科に通院していたとします。
交通事故に遭って、「脊髄損傷で肩から腕にかけて痛みやしびれがある」と訴えたとしても、以前から五十肩でその症状が出ていた場合には、交通事故による後遺症とは認められません。
他にも「交通事故で負った腰髄の脊髄損傷のせいで、排尿障害が出た」と言っても、実際には前立腺の病気という既往症があり、排尿障害は前立腺の病気からであると認定されれば、交通事故の損害賠償の範囲には含まれません。
また、年齢や性別・生活習慣や職業歴なども、素因減額に加味されることがあります。
同じ個所に脊髄損傷を負った患者で、腕が肩より上にあがらなくなったという症状を訴えたとしても、高校生ならば「脊髄損傷が原因で腕があがらなくなった可能性が高い」と考えますが、80歳の高齢者ならば「80歳の高齢者だったら年齢から考えて、腕が肩より上にあげられないのはよくあることだし、交通事故の後遺症ではないかもしれない」と判断がされてしまうこともあるのです。
つまり、交通事故に遭った脊髄損傷患者の症状が、すべて交通事故に起因すると認められるわけではなく、「もともと被害者が持っていた障害や既往症に関しては、それを差し引いて損害賠償の金額を計算する」ということになります。
ですので、交通事故前から抱えている障害を隠したまま、交通事故で負った障害のように偽装すると、詐欺罪などの罪に問われる可能性もあるため、医師には正直に既往症などを申し伝えるようにしましょう。
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交通事故で脊髄損傷となった場合でも、被害者にもともと心身的なマイナス要因がある場合には、素因減額と言う形で損害賠償金が減額される。
交通事故で脊髄損傷を負った場合、加害者側に対して請求できる損害賠償項目を把握しておく事は重要である。被害者が該当する損害賠償項目を主張し忘れることの無いよう確認しておかなくてはならない。
慰謝料とは、文字通り「慰(なぐさ)め、謝(あやま)るため」に支払うお金で、脊髄損傷の痛みや以前の日常生活を送れなくなった事へのお詫びの気持ちを表す金銭である。
交通事故で脊髄損傷の逸失利益の計算には、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率が使われるが、労働能力喪失率の上昇が認められたり、全く認められないといったこともあり得る。
交通事故で受傷した脊髄損傷は、後遺障害等級の認定を受けられれば高額の慰謝料を見込める。今後の人生を大きく変える怪我であるため、納得いく金額を受け取るために、弁護士に相談するべきである。