脊髄損傷とEDの関係性について
交通事故で脊髄損傷となられた男性の中には、後遺症としてEDを訴える方がいます。
脊髄損傷によりEDとなるメカニズムは、脊髄の中にある勃起中枢が刺激されると勃起が、脊髄の中にある射精中枢に刺激が加わると射精が起こるのですが、脊髄損傷により勃起中枢や射精中枢が働かなる事が原因です。
EDは男性としてのアイデンティティーにかかわるもので、「単なる身体機能の一部の不全」と単純に片づけることができない問題です。
脊髄損傷となられた男性が未婚や子供がいない夫婦であった場合には、さらに問題は深刻化します。
交通事故の脊髄損傷により射精障害のタイプのEDとなった場合、妊娠確率は非常に低くなります。
ある医療機関の調査によると、男性の脊髄損傷患者のうち60%は勃起可能で、15%は射精が可能でしたが、妊娠率をみると2%と決して高い数字ではないことが分かります。
つまり、脊髄損傷が起因のEDである場合には、通常の不妊治療よりも困難であったり、不妊治療自体が無理であったりするため、それにより将来的な結婚に支障が出たり、時として夫婦の離婚問題に発展しかねない問題をはらんでいるのです。
将来的な事を考えて損害賠償請求を
交通事故でEDとなられた患者の中には、加害者に対してもEDの事を隠されることがあります。
EDは性的な問題であるため、「加害者に知られるのは恥ずかしい」と考える方もいるからです。
ですが、先述したように将来的に結婚に支障が出たり、子供を望んでも出来ない可能性もあるため、身体的な後遺症としてはもちろんの事、将来的な慰謝料として加害者に請求をする必要があります。
判例でも、脊椎損傷によるEDに対しては、治療費や将来的な利益がなくなった逸失利益と言うよりも、後遺症や慰謝料としての支払いを命じることがほとんどです。
また、女性の場合は性交渉不能、子宮内膜症、月経時疼痛などが、交通事故の後遺症として現れることがありますが、交通事故との因果関係を証明することが男性のEDよりも困難であることが多いです。
男性女性共通して言えるのが、年齢も判決に関係する点です。
20歳男性と60歳の男性では、20歳男性の方が将来的なEDによる不利益が多くあるのは明白ですが、60歳男性では結婚や新たな子供の妊娠の可能性は低いため不利益は少ないと、裁判所が認めない可能性が高いと言えます。
しかし、交通事故の脊髄損傷によるEDなどの性不全に対しての判例が少ないのも実情で、交通事故にかなり精通した弁護士でないと解決できない難問の一つだと言えます。
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保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷の症状は四肢の麻痺が代表的なものであるが、一見して脊髄損傷によるものとは分からない症状もあるため注意が必要である。
脊髄損傷による損害賠償の内訳は、大きく分けて積極的損害と消極的損害の2種類があり、もともとの損害に対する補償の性質が異なる。
脊髄損傷のなかでも頚髄が損傷すると、自律神経障害がみられることがある。症状として体温調節機能の低下や血管運動神経の障害、異常疼痛や異所性骨化などがみられる。
脊髄損傷の症状は、交通事故発生からしばらくして現れることもあります。事故現場で自覚症状がなくても、警察を呼んで交通事故の報告をしましょう。