脊髄損傷による麻痺以外の症状はどんなものがある?
脊髄損傷と言うと真っ先に、「下半身麻痺で車いす生活になった」とか、「腕がしびれてうまく動かなくなった」と、四肢の麻痺が思い浮かぶと思います。
しかし実際には、脊髄の中には体中の重要な神経が通っているため、脊髄損傷によって引き起こされる症状は、麻痺だけとは限りません。
特に不完全脊髄損傷で、筋肉などの運動部分に損傷はないが、その他の部分に損傷があった場合には、「見た目や動作では健常者と変わらないため脊髄損傷患者に見えないが、脊髄損傷の障がいを抱えている」というケースもあります。
こういった脊髄損傷で厄介なのが、「患者も医者も、体の不調の原因が脊髄損傷だということに気付いていない」というケースです。
内臓関係の不調であった場合、「患者の年齢が高いので、加齢によるものだ」、「糖尿病の既往症があったから、尿の出が悪くなったのも糖尿病が進行したから」、「めまいがするが、年齢的にも閉経の時期だから更年期障害かも」と、脊髄損傷以外を原因と考えてしまいがちです。
交通事故の後にMRIやレントゲンの検査を受けなかった、または受けたがその時は脊髄損傷の箇所を発見できなかったという場合には、脊髄損傷の可能性自体を想像していないため、のちのちの後遺障害認定で不利になる可能性が出てきます。
こんな症状が出たら脊髄損傷を疑おう
脊髄損傷で現れる症状は四肢の麻痺だけではないため、下記に記す症状が交通事故後に発症した場合は、脊髄損傷を疑った方が良いかもしれません。
1.排尿や排便に違和感・支障がある、男性の場合はEDの症状がある。
排尿や排便には、神経が大きくかかわっています。
膀胱に尿が溜まると尿意を脳に伝え、排尿の準備が整うと膀胱の筋肉を緩めて排尿をします。
排便も同じく、便意を脳に伝えて排便の用意が整えば、肛門を緩めて排便します。
もし、このうちの一つでも神経伝達がうまくいかなくなったとすれば、「尿が溜まっているのに気が付かず漏らしてしまった」「便意があるのに排便できない」「尿を出し切るのに時間がかかる」といったことが起こります。
また、脊髄反射である勃起も、脊髄損傷で支障をきたすことがあります。
2.顔がほてる・汗を異常にかく・めまいがする。
これらの症状は更年期障害に似ていますが、発症のメカニズムも非常に似ています。
人には交感神経と副交感神経と言う、「体を活動的にするスイッチ」と「体を休めるスイッチ」を両方持っています。
脊髄損傷によってこのスイッチの調整がうまくいかなくなると、交感神経が異常に作用する時があります。
交感神経は体を活動的にさせますので、体温の上昇や血圧の上昇を促すのですが、暴走してしまうと、顔がほてる・汗を異常にかく・めまいがするといった症状を引き起こします。
3.触感・温感・痛感の鈍化・鋭敏化。
「手にお茶がかかって熱いはずなのに、熱く感じない」「足を怪我して血が出ているのに傷みを感じない」という場合には、脊髄損傷で神経伝達が阻害されている可能性があるため、精密検査をする必要があるでしょう。
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交通事故による脊髄損傷は、症状に応じて後遺障害等級が分かれる。慰謝料に大きく影響する部分であるため、具体的な症状と等級を照らし合わせ、把握するのが望ましい。
脊髄損傷の症状は、完全麻痺やしびれなどが代表的なものではあるが、痛みや温冷を感じなくなるなどの感覚異常や、排尿や排便が困難になるなどの様々な症状がある。
保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
交通事故で脊髄損傷となると、脊髄内の勃起中枢や射精中枢が働かなくなり、EDとなる事がある。
脊髄損傷と一口にいっても、必ず上位の後遺障害等級に当てはまるとは限らない。当該症状に応じ、認定される等級は異なり、等級が高いほど慰謝料の額にも関わる。