交通事故の後遺障害等級が労災と自賠責で違うときの請求法
【質問】
通勤中、自転車に乗って交差点の横断歩道を渡っていたところ、前方不注意の乗用車に右側から追突される交通事故に遭いました。
体が道路に投げ出され、顔面・左手を骨折、右ひざは靭帯断裂の重傷でした。
そのまま10ヶ月間入院し、さらに1年間通院を続けたものの、今も顔や足に痛みが残っていて手指がうまく動きません。
通勤中の交通事故だったので労災を利用しており、自賠責保険も加入しています。
先日、自賠責の方へ後遺障害等級の申請をして14級に認定されました。
続けて労災の方も診断書を提出中で、結果を待っているところです。
交通事故や保険に詳しい知人から、労災の方が高い等級で認定されることが多いと聞きましたが、二つの認定基準は違うものなのでしょうか。
労災と自賠責、重複して受給できないことは聞いています。
もしも労災で12級の認定を受けられた場合、労災での保険金を受け取ればよいのか、それとも低い基準の自賠責の方に合わせなくてはならないのでしょうか。
長期間の治療に加え後遺障害が残り、これまでのように仕事が出来ない状態で、十分な賠償を受けられる方法を選びたいと考えています。
【回答】
自賠責の1級~14級までの後遺障害等級の内容は、労災の等級表に準じたものであり、ふたつの後遺障害等級認定の基準は同じと考えてよいでしょう。
それでも質問にあるように、自賠責と労災双方の認定結果が一致しなかったり、一方では認定されたのにもう一方で非該当、というケースがあります。
確かに、労災の方が高い等級になる傾向があると言われてきましたが、必ずしもそうなるわけではありません。
交通事故による後遺障害等級の認定結果が違ってくる原因としては、自賠責と労災に提出する診断書内容の違いが挙げられます。
診断書を作成する医師が違っていた、残存する自覚症状がきちんと記載されていない、など等級の判断に必要な検査結果が異なっているなどの可能性があります。
認定結果には異議申立てができますが、その場合、認定結果を覆すだけの根拠をもつ資料が必要です。
では、「労災では12級を受けられた」という認定結果を伝えることで自賠責でも12級を目指せるかというとあくまで参考情報にしかならず、症状の有無やレベルを示す診断のみが重視されます。
認定結果に異議申立てをした方がいいかどうかはケースバイケースです。
質問の状況の、労災では12級の後遺障害等級が認定された場合には、まずは労災給付を受け、そのうえで労災では項目がない慰謝料や、休業損害で相殺されなかった部分、つまり重複しない部分について、自賠責に請求することになります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
通勤中の交通事故では自賠責のほか労災にも保険金を請求できることがある。状況によるが、一般的には労災へ先に申請して、差額を自賠責へ請求することが多い。
交通事故の被害者は、自賠責保険に直接請求することができる。このことを、自賠責保険の被害者請求と言う。
交通事故の示談後に後遺症が悪化しても基本的には補償してもらえないが、示談時には予想できなかったほどの著しい悪化の場合は、示談を無効とする判例もある。
交通事故が原因で営んでいる自営業に損失が生まれた時、損害賠償を請求する事ができる。請求できる範囲には限りがあるため、しっかり確認する必要がある。
交通事故を直接の理由として企業が従業員を解雇することはできない。交通事故が原因の休業による解雇で休業補償を請求するには、交通事故と解雇との因果関係の証明が必要だが、証明書類の用意は困難である。