交通事故の示談以降に症状が悪化した場合、請求はできる?
【質問】
1年前に交通事故で、脊椎を骨折しました。
3カ月入院し半年間通院治療をしたのですが、脊椎に変形が見られ、脊椎の一部にも損傷が残りました。
症状固定をした際に、歩行困難や排尿障害などを交通事故の後遺症として認定されました。
その後、示談をしたのですが、示談をして2カ月ほどして脊椎の変形が悪化し、周辺部分が化膿したため、患部を廓清してから脊椎を人工骨と取り換える手術を受けました。
医師から、脊椎変形の悪化は交通事故の骨折が直接的な原因だと言われました。
今回の手術と入院の費用は自己負担であったため、早まって示談したことを後悔しています。
示談をしてしまうとやり直しが出来ないと、示談の時に保険会社からは言われていたのですが、本当に交通事故の示談後に症状が悪化した場合でも、再請求をすることは不可能なのでしょうか?
【回答】
交通事故の示談というのは、「示談金を支払うことによって、加害者の損害賠償責任がなくなり、被害者は損害賠償請求権がなくなる」ということになりますので、示談以降は加害者・被害者双方ともに、示談内容を変更することはできません。
そのため、示談以降に症状が悪化しても被害者は追加の請求をすることはできませんし、反対に被害者が劇的に回復して後遺症がなくなったとしても、支払った示談金の返金を請求することはできません。
しかし、非常に少数ながら示談交渉を無効とする判例もあります。
「加害者から脅迫を受けて、無理やり示談させられた」
「加害者が口頭でした説明を信じて示談書に記名捺印したが、示談書の内容は全く違っており騙された」
「自分の後遺症を医師の言われるがまま、信じていたが、別の医師に再検査してもらったところ、当初よりも重大な後遺症があったことがわかった」
というような場合です。
今回のケースでは、示談後に後遺症が原因でさらに病状が悪化したということですが、示談時に悪化を予見することが容易であったかということと、悪化の原因が患者本人にないということが焦点になります。
もし医師から、「脊椎が変形しているところは負担がかかりやすいので、悪化が出やすい」というような診断が出ていた場合には、示談時に「もしかしたらすぐに悪化するかも?」ということが予想できたはずです。
また、変形をした脊椎に負担をかけない生活をしていたのならば、自然発生的に起きた悪化だと推測されますが、「重い荷物を持った」「長時間同じ姿勢で座って、背中や腰に負担がかかっていた」というような場合には、悪化の原因は患者の生活習慣によるものとされ、認められません。
どちらにしても、一度してしまった示談を無効とすることは大変困難であるため、示談時には示談内容を必ず確認するようにしましょう。
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交通事故が原因で営んでいる自営業に損失が生まれた時、損害賠償を請求する事ができる。請求できる範囲には限りがあるため、しっかり確認する必要がある。
個人で保険会社と交通事故の示談交渉をするのには限界があるため、示談交渉がうまくいかない場合には弁護士に任せた方がうまくいく。
交通事故の示談とは、交通事故で被害者が受けた被害に対して、被害者と加害者の間で損害賠償金額や支払い方法などを、取り決めることである。
自分にも過失がある交通事故の場合、保険会社は自身が示談交渉権があることを盾に、弁護士費用特約の利用を許可しないことが多い。
交通事故の被害者が治療を続けていると、一定の時期を迎えた時、加害者側の保険会社から治療終了の打診がある。まだ治療を続けたい意思があるのなら、主治医に相談するべきである。