交通事故の逸失利益の計算に使われる収入は額面計算なのか?
【質問】
交通事故に遭い、足に後遺症が残ったため、後遺障害等級11級に認定されました。
加害者側の保険会社から交通事故の示談交渉の打診が来ているのですが、その中で後遺障害に対する逸失利益の計算方法について疑問があります。
私は会社員ではあるのですが、かなり特殊な職種についているため、年収が額面で2000万円あります。
そのため、所得税や住民税・厚生年金・健康保険料などを差し引くと、半分近くが税金などで引かれており、手取りとしては1100万円ほどになります。
保険会社からは逸失利益を計算する際には、収入を証明するのに源泉徴収票が必要だと言われました。
逸失利益の計算をする際に使われるのは、税金等が引かれる「額面」なのでしょうか?それとも実質の「手取り」になるのでしょうか?
私の場合には、単純計算で額面と手取りでは倍の開きがあり、逸失利益もどちらで計算するかによって倍近く変わってくるため、非常に気になっています。
【回答】
逸失利益を計算する際に、非課税額を参照するか課税後の金額を参照するかの議論がありますが、判例においては額面通りの非課税額を参照することが主流になっています。
損害賠償金に関してはもともと非課税との考え方であるため、損害賠償金の1種である逸失利益に関しても、そのもととなる収入も非課税額で計算するという考えの判決が多いです。
受け取る側の被害者からすれば金額が多い方が被害者救済となるため良いのですが、高額所得者の場合には、交通事故以前は額面額よりも大幅に下回る手取り金額で生活していたため、「高額所得者優遇の計算方法では?」という声も一部あります。
そのため、死亡事故の場合には、逸失利益の計算に使う収入に関しては額面通りとするものの、生活費控除を一般的な収入の者よりも高めにして調整することがあります。
死亡事故の逸失利益の計算は「現在の額面収入(年収)×平均余命から出されたライプニッツ係数×生活費控除」となります。
「年収が高い」、「交通事故の被害者の年齢が若い」といった場合には、逸失利益が上昇しますが、「被害者のために使われていた生活費(生活費控除)」の割合が高いほど、逸失利益は減少します。
逆に言えば、裁判所と言えども「年収」や「被害者の年齢」に関しては、確たる証拠である事実であるため数字を動かすことはできませんが、「生活費控除」と言うあいまいで調整が効く部分で調整をとっているというのが実際のところです。
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自賠責保険の手続きを保険会社に任せてしまうと、保険金が低くなる可能性が高いので、出来る限り自分で請求をした方が良い。
自分にも過失がある交通事故の場合、保険会社は自身が示談交渉権があることを盾に、弁護士費用特約の利用を許可しないことが多い。
交通事故の示談交渉は当事者同士が行うか、代理権を有する保険会社か、依頼を受けた弁護士しかすることができないため、たとえ家族であっても示談交渉を任せることはお勧めできない。
交通事故以前から障害があり、交通事故で悪化した場合には、以前からの障害を考慮して差し引いた保険金が支払われるが、完治していた場合には純粋に交通事故で負った怪我として扱われる。
個人で保険会社と交通事故の示談交渉をするのには限界があるため、示談交渉がうまくいかない場合には弁護士に任せた方がうまくいく。