名義貸しの自動車での交通事故は名義人にも請求ができる?
【質問】
横断歩道を歩行中に、自動車にはねられて怪我を負いました。
警察をすぐに呼んで人身事故扱いにしていますが、加害者とその自動車の所有者の間でもめています。
交通事故以降一度も加害者から連絡がなく、仕方なく交通事故証明書を取り寄せて、加害者の連絡先を調べて電話をしましたが、電話に出ないだけでなく、内容証明付きの郵便も受け取り拒否で返ってきました。
交通事故証明書をよく見ると、加害者と自動車の名義人が違ったため連絡をしてみました。
そうすると所有者は加害者の兄にあたる人で、弟は消費者ローンなどでブラックリストに載っていて、自動車ローンを組めなかったため、自分の名義を貸しているだけだと言われました。
自動車ローンも実際は弟が返済しており、交通事故のことは初耳だが、ただの名義貸しなので弟に請求してくれと、言われてしまいました。
以前テレビで「交通事故の場合、自動車の所有者も運転手と同じように連帯責任を負う」と聞いたことがあるのですが、名義貸しの場合には請求をすることができないのでしょうか?
【回答】
運転手と自動車の所有者の名義人が違う場合の交通事故というケースでは、しばしば「運行供用者責任」について議論されます。
運行供用者責任とは簡単に言うと「事故を起こした本人と自動車の所有者が連帯責任を負う」ということであり、広義的には自動車の所有者でなくても、業務の元請け会社が責任を負うことがあります。
名義貸しの場合この判断が難しくなるのですが、業として名義貸しを行っている者は、運行供用者責任があるとの判例があります。
今回のケースでは金銭の授受は定かではありませんが、兄弟間という極めて近しい間柄であり、名義貸しの事実を認めている点からも、運行供用者責任が問える事例だと思います。
交通事故でなくても、駐車違反やオービスによるスピード違反の検挙で運転手が不明の場合は、所有者にその違反金の請求が来ることからも、「名義貸しなので責任がない」との一方的な主張は通らないと思われます。
とはいえ、加害者本人との連絡がつかない場合には、示談交渉も進みませんので、加害者の兄と通じて連絡をとれるようにするのが無難です。
それでも示談交渉の場に来ない場合には、弁護士を雇って対抗するのが効果的だと考えられます。
また、加害者が協力的でない場合には、自賠責保険の方は被害者自身が請求する「被害者請求」をすれば、直接自賠責保険から保険金を受け取れるため、交通事故証明書に書かれている自賠責保険の窓口保険会社に連絡してみましょう。
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交通事故の示談を任せる弁護士選びのポイントは、交通事故に精通していて、フットワークがきく近隣に弁護士事務所がある弁護士で、相性が合うと思った場合に依頼をした方が良い。
交通事故の示談交渉は当事者同士が行うか、代理権を有する保険会社か、依頼を受けた弁護士しかすることができないため、たとえ家族であっても示談交渉を任せることはお勧めできない。
自分にも過失がある交通事故の場合、保険会社は自身が示談交渉権があることを盾に、弁護士費用特約の利用を許可しないことが多い。
軽微な交通事故で警察に届け出をせずにその場で示談してしまうと、届出義務違反となるだけでなく、自動車保険を使うことができなくなるリスクが生じる。
交通事故の示談内容に納得できなければ、示談成立前に被害者請求をして、先に自賠責の保険金を受け取ることは可能である。その後、任意保険へ不足分を交渉すると良い。