自動車同士の交通事故で相手とその場で示談したのは間違い?
【質問】
塾に行っている子供を迎えに行く途中、自動車と接触事故を起こしました。
私の方も相手方も徐行運転であったため、接触事故と言ってもお互いが急ブレーキをかけた後に止まりきれずにぶつかったような状態でした。
ぶつかってすぐに、お互いに自動車から降りて接触した個所を見たのですが、私の方のフロントバンパーはかなり曲がっていました。
反対に、相手方の自動車は年季の入った軽自動車で、どこが当たったのかと分からないくらい、すでに傷や当たった跡がありました。
相手の人は「元からボロい軽自動車だから、気にしなくていいよ。体の方もなんともないから、お互いの自動車を自分で直すことでいいのではないかな?」と言われました。
どちらかというと私の方の過失が高く、しかも子供を迎えに行かなければいけないとの焦りから、その提案を受け入れました。
しかし、仕事から帰宅した夫に、「なんで警察に交通事故だって通報しなかった!その場で示談して後で困るのはお前なんだぞ!」とかなり叱られました。
そう言われて何か不都合があるのではと思い始めると、その場で示談してしまったことが不安で仕方がありません。
その場で示談したことで、何か不都合なことはあるのでしょうか?
【回答】
軽微な交通事故の場合、「お互いが自分で修理する」「後で請求はしない」ということでその場で示談をすることがあります。
しかしこれは、法律違反になります。
自動車で対物事故・人身事故のどちらの場合でも、警察への届出義務があります。
質問者は警察に事故を届け出ることをしなかったため、届出義務違反になります。
ですが、相手側も届け出ないと言っているので、この罪に問われる可能性は低いと言えます。
しかしながら、交通事故の届出をしないことで不利益を生じる可能性が、いくつか考えられます。
1つは自動車保険が使えない危険性がある点です。
「ちょっとした接触事故で体は大丈夫だけど、自動車の修理に40万円かかると言われたし、車両保険を使って直そう」と思っても、車両保険が使えないケースがあります。
車両保険は一般型とエコノミー型にわかれるのですが、自動車同士の事故の場合にはどちらも車両保険が使えます。
しかし、当て逃げや自損事故の場合はエコノミー型の車両保険では、保険金は支払われません。
しかも、警察に交通事故の届出をしていないと、警察から事故証明が発行されないため、車両保険が支払われない可能性があります。
また、一般型で自損事故でも支払われる場合でも、保険会社に正直に事故状況を話してしまうと、届出義務違反を盾に車両保険が使えないこともあります。
また、交通事故以後にむち打ち症状などが出ても、警察には交通事故の届出がないため、自動車保険からの保険金給付をしてもらえないことになります。
ついついしてしまいがちなその場での示談ですが、これだけリスクがあることを自覚しておく方が良いでしょう。
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交通事故以前から障害があり、交通事故で悪化した場合には、以前からの障害を考慮して差し引いた保険金が支払われるが、完治していた場合には純粋に交通事故で負った怪我として扱われる。
金銭の授受がないからと交通事故の示談を放棄するよりも、金銭の授受は行わない旨の記載をした示談書を作成して示談をした方が、のちのち紛争が起きにくい。
簡単な示談で済むだろうと思っていると、後になって交通事故の相手が嘘をついてくることは珍しくない。交通事故直後に警察へ適切な届け出をし、後で困らないように証拠を残しておくことが大事。
一度の事故で、物損と人身に損害を与えた場合、物損の示談だけを人身の示談より先にすることは可能である。
人身事故での示談は当事者間ですすめてよいが、交通事故があったことを警察に通報しないのは義務違反となり、人身事故では特に不利な状況になりやすい。