交通事故で被害者が立ち去る場合はどうすべきですか?
【質問】
先日、自動車で運転中に自転車との接触事故を起こしました。
事故の状況的には、自転車の右側通行、片手放しによるスマホ操作及びわき見運転からの車道への飛び出しと、自転車の運転手の方が圧倒的に過失がある状況です。
自転車の方は転倒だけで済んだのですが、私の方の自動車はボンネットに乗られたため変形した上に、バンパーが落ちかけてしまいました。
そのため、その場で警察に交通事故の通報をしたのですが、自転車の運転手がその間に立ち去る行動をとりました。
交通事故の検分に来た警察には、事故の状況と被害者が立ち去った事を伝えましたが、「被害者が不明のため、人身事故ではなく物損事故になるかも」と言われました。
この場合、本当に人身事故ではなく物損事故になるのでしょうか?
また、保険会社に交通事故を伝えれば、車両保険を使って自動車を修理することができるのでしょうか?
【回答】
交通事故を起こした場合には、警察に届け出る義務があります。
もし相手方に怪我があった場合にはひき逃げ扱いになりますので、質問者の対応は正しいと言えます。
ただ、被害者の方が交通事故現場から立ち去る場合、警察も「交通事故があって質問者の自動車の破損を認められるが、質問者の供述通り自転車に乗っていたという被害者が本当にいたかどうか不明で、出来るのは物損扱いが精いっぱい」というのが本当のところだと思います。
もし後日、その自転車の方が「交通事故を起こして、むち打ちになった」などと警察に申し出れば、はじめて人身事故として扱われるかもしれませんが、あまりにも時間が経ってからの申し出であれば、交通事故も物損として刑事的な処理が済んでしまっているため、警察も取り合わない可能性があります。
自動車の修理に車両保険を使いたいとのことですが、保険会社は「当て逃げ」とみなし車両保険でもエコノミーではなく一般型でないと、保険金が支払われない可能性があるため、保険会社への確認が必要となります。
もし、相手方が見つかった場合には、過失割合に応じた自動車の修理費を請求することができます。
物損で済んだ場合には、刑事罰(罰金や懲役)や行政罰(免許停止など)はありませんが、万が一人身事故に切り替わった場合には、刑事罰・行政罰が発生する可能性もあるので注意が必要です。
また、自動車自体に交通事故の痕跡がなく、被害者も立ち去るような場合には、警察自体が自損事故として取り扱わないケースもあるため、1カ月ほどたってから警察に交通事故の処理がどうなったか問い合わせてみても良いでしょう。
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相手方が物損事故を人身事故と変更した場合でも取り消しすることは困難であり、後の交渉でももめる可能性があるため、弁護士に依頼をした方が良い。
軽微な交通事故で警察に届け出をせずにその場で示談してしまうと、届出義務違反となるだけでなく、自動車保険を使うことができなくなるリスクが生じる。
人身事故での示談は当事者間ですすめてよいが、交通事故があったことを警察に通報しないのは義務違反となり、人身事故では特に不利な状況になりやすい。
民法上、ペットは物としての扱いになる事から、交通事故で怪我をしてしまったとはいえ、通常は物損扱いとなる。そのため、多額の慰謝料や治療費を請求する事は難しい。
交通事故の保険金支払いの基準は、低い順から「自賠責保険基準」「保険会社基準」「裁判所基準」があり、金額の差が数倍となる。