交通事故によるむち打ちの逸失利益は一生涯ではない?
交通事故でむち打ちとなり、後遺症で以前に比べて仕事の効率が落ちるということがあります。
交通事故の後遺症には第1級から第14級まであり、第1級の場合は重度の障害により仕事が出来ないため、仕事をする能力がどれだけ無くなったかを表す『労働能力喪失率』は100%です。
等級が下がるごとに労働能力喪失率は下がっていき、むち打ち単体で認定される第12級と第14級はそれぞれ14%と5%になります。
(同じむち打ちであっても後遺症状の重さで変わります。)
交通事故の後遺障害等級認定は、症状固定時の症状の診断書を見て判断されます。
症状固定とは、『交通事故に遭ってから治療を続けたが、むち打ちの症状が完治しなかった。これ以上治療を続けても良くもならないし悪くもならないので、今の症状を後遺障害とする』というものです。
例えば、40歳の男性が後遺障害第14級を認定された場合、67歳までの27年間の年収が5%下がると計算されるため、年収500万円とすると『500万円×27年×5%=675万円』になります。
この減った収入は『逸失利益』と言われ、実際には中間利息控除のライプニッツ係数を用いて算出されます。
逸失利益が一生涯保障されない場合も?
むち打ちの場合、逸失利益が一生涯保障されるのではなく、5年や10年と言った限定的な期間に留まることがあります。
「治療をしても症状が改善しないのだから、後遺症は一生涯の物では?」と疑問に思われる方もいると思います。
『後遺症は一生涯治らないものである』と言うのは正しい考えなのですが、ここで出てくるのが『馴化(じゅんか)』です。
馴化とは心理学の用語で『ある刺激が長時間繰り返し与えられることにより、その刺激に対して鈍感になり、反応が徐々に見られなくなっていく現象』のことを言います。
むち打ちの中でも軽度の痛みであれば、月日が経つにつれむち打ちの違和感に馴れ(慣れ)て、さほど感じなくなっていきます。
つまり、『むち打ちの痛みが発生する原因がなくなるわけではないが、痛みに対しては慣れて鈍感になるため、仕事に支障が出なくなる』と、逸失利益が生じる期間が限定的となることがあります。
逸失利益が期間限定となる場合、相手側とその期間の長さが争われることがあります。
被害者側からすれば一生涯の補償がいいですし、加害者側からすれば5年など限定的な期間の方が良いので、示談がまとまらないケースがあります。
判例でも一生涯認めたものから3年といった限定的なもの、場合によっては後遺障害は認めつつも逸失利益は認めないものまで、幅広くあります。
後遺障害認定や逸失利益で示談交渉が難航している場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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交通事故でむち打ちになった時、場合によっては休業損害を加害者へ請求する事が可能である。仮に請求する場合には、保証してもらうための必要書類を用意する必要がある。
むち打ちを交通事故で負った場合、弁護士費用特約を利用して、慰謝料の増額に備えるのが望ましい。特に後続車からのもらい事故の場合、代わりに交渉してもらう方が安心である。
弁護士費用特約は、むち打ちで多く見られるもらい事故被害者らを救済するために設けられた特約である。利用すれば弁護士費用の心配がなく賠償金額を増やせる可能性があるが、使えないこともある。
むち打ちの場合の労働能力喪失率は、後遺障害等級12級で14%、14級で5%であるが、被害者の症状や事情などで大きく変わる可能性があるため、弁護士に相談をした方が良い。
交通事故によって負ったむち打ちの治療中に治療費を打ち切られた場合には、医師に治療の必要性を認めてもらい、弁護士を通じて加害者側と示談するとよい。