むち打ちの症状が不定愁訴と言われた場合のいくつかの問題
むち打ちの診察においては、不定愁訴が医師から問診されます。
不定愁訴はあまり聞きなれない言葉だと思います。
愁訴と言うのは『患者が訴える症状』という意味なのですが、そこに『不定』が付いた不定愁訴となると『明確な医学的な原因が無いのに患者が訴える症状』という意味になります。
日常でも「なんとなく肩が痛い」、「頭が重い」、「イライラする」、「寝つきが悪い」、「寝ても疲れがとれない」といったことがありますが、これも不定愁訴と言えます。
むち打ちの多くはレントゲンやCTなどで異常が見られないため、患者からの聞いた症状が重要となってきます。
しかし、「第3頸椎から第5頸椎にかけて痛みがあり、第4頸椎と第5頸椎の間にずれがあると感じます。」といった具体的な症状を言える患者は皆無です。
ほとんどが、「首が痛いです。」「右の首の筋が張っている感じです」といった、不定愁訴の表現をされます。
不定愁訴では伝わらないことも
医師は医療のプロフェッショナルですので、患者がいう不定愁訴の中から病状を推察していくのですが、いくつかの問題があります。
レントゲンやCTなどの医学的な画像からは異常個所が見られないため、「単なるむち打ちだ。」と思い込み、不定愁訴も「よくあるむち打ちの症状。」と軽く見られてしまう点です。
単なるむち打ちであるのならばよいのですが、実際は脊髄損傷個所があったり脳脊髄液減少症であったりした場合、見逃されてしまう可能性があります。
もう一つが、不定愁訴は患者の主観のみのものであることです。
患者が痛いと訴えても、怪我の様に目に見えて患部に異常があるわけでもなく、検査でも異常がないため、ある意味「患者だけが言っている」ということになります。
むち打ち患者からすれば本当に痛くて受診しているのに、医師から「嘘ではないか?」と疑われるのは不本意でしょう。
しかし、交通事故の場合、加害者側からすれば被害者が通院すればするほど治療費がかさみ慰謝料も増えていくため、詐病(病気と嘘をつくこと)であるならば支払いたくないと考えます。
むち打ちの場合は3日から3週間で完治することが多いため、よく「むち打ちで1か月通院しているが、保険会社から治療費の支給の打ち切りをされた。」というのはこういった理由もあります。
また、患者の伝え方が悪かったり、受け取り手である医師との齟齬が生じて、症状が正しく伝わらないといった問題もあります。
保険会社との示談においても、不定愁訴をもとにした話し合いが行われるため、保険会社と意見が対立しやすくなります。
そのため、示談に交通事故に詳しい弁護士に入ってもらい、正しく保険会社に伝えることで示談がスムーズに進むことが多いです。
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医学的な画像診断が得られないむち打ちの場合、神経学的検査が行われることもあるが、絶対的な検査方法ではない。
交通事故で怪我をした直後は自律神経の中の交感神経が活発に働いていて痛みを感じにくいため、むち打ちは症状を感じにくいと考えられている。
むち打ちの治療期間の多くは3か月以内で完治するものが多いが、むち打ちの症状によっては症状が長引くこともあるので、保険会社が治療費の打ち切りを言ってきても、医師の指示があれば治療を続けられる。
むち打ちの検査は、レントゲンやCTなどの画像診断のほかに、筋萎縮テストなどの神経検査や脳波検査がある。むち打ちが長引くようであれば、画像検査のほかの検査を受けるとよい。
交通事故のむち打ちの症状固定をした後も通院を続けた方が、後遺障害認定の時に認定されやすくなったり、示談交渉で有利となることもある。