死亡事故の示談、いつまでに行わないといけない?
家族が交通死亡事故に遭われた場合、遺族は心の整理がなかなかつかないというのはよくはあるというより、ほとんどではないかと思います。
「朝元気に出て行ったのに、今でも信じられない。」、「あの日に限ってつまらない事でケンカになって家を出るのが遅くならなかったら、事故に遭わなかったのでは?」、「いつも通っていた道なのに、暴走した車が突っ込んでくるなんて。」と、突然の訃報への悲しみ、加害者への憤り、後悔や自身の責任で無い事まで自分を責めたりと、何年経っても心の傷が癒えず、反対に精神的に悪化する人もいます。
そのため、死亡事故の加害者や加害者側の保険会社から示談を申し出られても、素直に交渉の場に出られない被害者家族も多くいます。
加害者の立場としては、死亡事故の刑事裁判の結審までに示談が終わっていれば、減刑の可能性が高まりますし、保険会社は業務の一環として示談交渉をしているため早期終了を望んでいます。
とはいえ、死亡事故の被害者遺族がそれに応じる必要はないため、示談交渉をそのまま放置している人も少なからずいます。
もし、被害者遺族が示談をしなければどうなるかというと、最終的には加害者や保険会社に損害賠償請求が出来なくなります。
時効が来る前に示談成立を
交通事故の示談は、法律的には損害賠償に当たります。
そのため、民法の損害賠償請求権の消滅時効に準じ、旧民法724条では被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年で消滅時効でした。
過去形で記載しているのは2020年4月1日に民法が改正され、最低3年を基準としつつも、生命や身体を害する不法行為については時効が5年と延長となったからです。
交通死亡事故は生命を害する不法行為であるため、時効が事故日から5年に延長となったのですが、2020年3月31日以前に起こった交通死亡事故に対しても、2020年4月1日時点で時効が成立していないものに関しては、事故日より5年に延長されます。
例えば、2017年4月10日に起こった死亡事故は、旧民法では2020年4月10日で消滅時効を迎えますが、民法改正で2022年4月10日までに延長されます。
時効が来る前に示談を終わらせる必要があるのですが、『5年では時間が足りない』、『気が付いたら示談が迫っていて、示談の内容の確認がちゃんとできない』といった場合に、時効の日時を伸ばす方法があります。
法律的には、『時効の更新』と言い、旧民法では『時効の中断』と言われていました。
具体的な時効の更新方法はいくつかあります。
1つ目は裁判所に申し立てをすることです。
裁判所が訴えを受理した段階で時効が停止しますので、裁判が結審するまでは時効が来ることはありません。
2つめは催告をすることです。
内容証明郵便などで相手方に損害賠償請求をすることで、6カ月の延長がなされます。
ただ、6か月を過ぎてしまうと、新たに催告をしても延長されず、元の時効期限を過ぎている場合には時効が成立してしまいます。
そのため、催告をした後に相手からの返事が無い場合には、裁判所に申し立てをすることも検討しなければいけません。
3つめは相手方に時効の更新の承認を得ることです。
ここで言う承認は、『時効の更新を認める』という意味ではなく、『損害賠償請求の債務があることを、加害者側に認めさせる』という意味です。
つまり、『死亡事故の示談金を支払う義務がある』という意思を加害者側が示す事で、時効の更新がなされます。
例えば、『一時金(仮払金)を遺族に支払った』、『示談内容や金額が書かれた書類を遺族に提示した』といった行為がこれに相当します。
この場合、承認を行った時点から時効の起算が始まりますので、仮に2017年に起こった死亡事故でも2021年に一時金が支払われているのならば、時効は2026年に延長されます。
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未成年者の死亡事故の場合は、成年の損害賠償金の計算方法とは異なるため、その点で加害者と意見が対立することがあるので、弁護士を通じて示談を進める方が良い。
家族が死亡事故に遭った場合、警察や保険会社、あるいは葬儀社とのやりとりをしなければならない。それらの負担を抑えられるメリットがあるため、弁護士へ依頼するのもひとつの手段である。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。
死亡事故のように損害賠償額が大きくなったり、加害者との争点が生まれたりしそうな場合ほど、弁護士の力が求められる。その時、できる限り交通事故に強い弁護士を選ぶのが望ましい。
死亡事故の損害賠償金は遺言書に左右されないため、早い段階から弁護士に介入してもらい、死亡事故の示談と相続の調整をしてもらう方が問題が起きにくい。