死亡事故の賠償金は自賠責基準と弁護士基準でどの程度違う?
死亡事故の賠償金の算出では、自賠責保険における基準額である「自賠責基準」、任意保険において各社が設定する「任意保険基準」、訴訟になった場合の判例をもとにした「裁判所基準または弁護士基準」の3つの基準が存在し、後者になるほど金額が多くなります。
このなかで自賠責基準と任意保険基準は、多くの場合あまり差がありません。
この3つの基準があることを知らないまま、保険会社が「これが精いっぱいの数字です」と提示してくる賠償金額のままで示談に応じてしまうことで、本来得られるはずだった損害賠償を受け取れない可能性があります。
死亡事故の賠償金は、葬儀費用、逸失利益、慰謝料の大きく3つで構成されます。
それぞれの費用で、自賠責保険基準と弁護士基準(東京での例)とではどのような内容の差があるのかを見てみます(あくまで基準であり、事故当事者の事情や地域によっても変わってきます)。
まず葬儀費では、自賠責保険では60万円、弁護士基準では150万円が基準となり、その差は90万円です。
被害者が生涯に稼げたであろう金額である逸失利益は、年収、生活費控除率、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用いて算出しますが、自賠責保険ではそのまま控除される生活費が、弁護士基準では50%~70%差し引かれるようになっており、結果的に弁護士基準の方がかなり多くなります。
基準額が大きく違ってくる慰謝料
続いて慰謝料です。
自賠責基準の場合、死亡した本人への慰謝料として350万円、これに遺族となる請求権者1名につき550万円、2名で650万円、3名で750万円が加算され、被害者に被扶養者がいるときには200万円がさらに加わります。
一方、弁護士基準の慰謝料は、被害者が家庭内で果たしていた役割により区別され、一家の支柱となっていた場合で2,800万円、母親・配偶者の場合2,400万円、上記以外の独身男女、子供、幼児であれば2,000~2,200万円が基準です。
このように、慰謝料だけを見ても弁護士基準では2,000万円以上の請求ができるところを、保険会社は1,000万円やさらに低い金額で算出し、葬儀費、逸失利益とも同じく低めに見積もられます。
こうして本来受け取れるはずの賠償金があることを知らないままに、死亡事故の示談に応じてしまう可能性があります。
交通死亡事故対応を専門とする保険会社に対し、個人で弁護士基準を持ち出し交渉しても、「では訴訟を起こしてください」と言われてしまいます。
早めに交通死亡事故を扱う弁護士に相談して、アドバイスを受けながら示談を進めるようにしてください。
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家族が死亡事故に遭った際に請求できる慰謝料は死亡慰謝料と呼ばれ、死亡した被害者本人に対する本人慰謝料と被害者の近親者に対する慰謝料といった内訳は2種類に分別される。
ご家族が死亡事故に遭われると、正常な判断ができなくなる可能性があります。抜けのないよう、損害賠償を全て請求するためにも、その種類についてはしっかりと把握しておく事が大切です。
家族が死亡事故に遭った場合、警察や保険会社、あるいは葬儀社とのやりとりをしなければならない。それらの負担を抑えられるメリットがあるため、弁護士へ依頼するのもひとつの手段である。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。
死亡事故の民事裁判となった場合、加害者側は損害賠償金の遅延損害金も併せて支払わなければいけなくなる。