死亡事故の被害者が遺言書を書いていた場合、損害賠償金は?
『終活』という言葉が世間に認知され、生きている間に自分が死んだ後に残された家族が困らないようにと、不要物の処理をしたり遺言書を書いたりということをする人もいます。
遺言書は亡くなった人が自分の遺志を伝えるものなのですが、一歩間違えると遺族間で紛争が起こることがあります。
よく市販のエンディングノートに事細かく書かれている方もいますが、エンディングノート自体に法的な拘束力はなく、遺言書とエンディングノートで内容が違っても遺言書にのみ法的効力があります。
では、遺言書であれば大丈夫なのかと言うと、遺言書には法的に有効となるポイントがいくつかあり、また有効な内容でも遺族の中で不利な者は、遺言書の信用性に関して裁判所に異議を申し立てることもあるので、弁護士立ち合いで作成するか、遺言公正証書として作成する方が無難と言えます。
死亡事故の被害者が遺言書を書いていた場合、遺産及び死亡事故の損害賠償金はどうなるのでしょうか?
死亡事故時の遺言書の有効性は?
遺言書が法的な効力を持つためには、いくつかのポイントがあります。
例えば「妻に全財産を譲る」という書き方は、多少の問題を含みますが有効です。
「自宅は妻に、会社は息子に、預貯金は娘に譲る」という場合には、被相続人の財産目録を作成しておく必要があります。
しかし死亡事故の損害賠償金は、遺言書を作成した段階では発生しておらず、また予測することも不可能であるため、遺言書の内容に左右されません。
先ほどの、「自宅は妻、会社は息子、現金は娘」という場合、一見すると現金を相続する娘が死亡事故の損害賠償金も受け取れそうですが、実際は死亡事故の損害賠償金については相続人間の話し合いで調整が行われます。
多くの場合は法定相続割合に応じた分割で話し合われることが多いのですが、遺言書の内容が元から不均等であった場合などは、一筋縄でいかないこともあります。
例えば、遺言書は「先祖代々の土地を長男に譲る代わりに、現金は長女に譲る」となっているが、「長女が、『現金よりも土地の価値の方が大きいけど、兄が実家を守るからと納得したけれども、死亡事故の損害賠償金が入るのならば多くもらいたい』と主張。」という様なケースです。
長男が遺産は遺言書通り、死亡事故の損害賠償金は法定相続割合通りと主張した場合、長女は遺産の金額によっては遺留分侵害の訴えをするかもしれません。
もし、遺留分を長女に支払うために、現金が足らない分土地を売らざるを得なくなった場合などは、個人の遺言書の意思とは大きくかけ離れてしまう可能性もあります。
死亡事故の場合は往々にして損害賠償金額が多額になる傾向があるので、「遺言書があるから大丈夫」と安心するのではなく、早い段階から弁護士に依頼して死亡事故の示談と遺産相続の調整をしてもらう方が、もめごとを事前に防ぐことができます。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
家族が死亡事故に遭った場合、警察や保険会社、あるいは葬儀社とのやりとりをしなければならない。それらの負担を抑えられるメリットがあるため、弁護士へ依頼するのもひとつの手段である。
家族が死亡事故に遭った場合には示談交渉を行うが、損害賠償請求権の時効は事故日から5年である。しかし、提訴や催告、承認などで時効の更新(中断)を行う事が出来る。
保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。
死亡事故で亡くなった人と特に親しい近親者は、近親者慰謝料を請求できる可能性があるが、近親者慰謝料を請求するには、精神的な苦痛を受けたことを実証する必要があるため、弁護士に相談するほうが良い。