未成年者が死亡事故の損害賠償金を受け取るケースについて
死亡事故は老若男女にかかわりなく起こるため、死亡事故の被害者が幼い子供の親という事があります。
仮に夫が死亡事故で亡くなり、遺族が妻と22歳の娘と18歳の息子だった場合、法定相続割合に準じれば妻が1/2、子が1/4ずつ遺産を相続することになります。
しかし、ここで問題となるのが、18歳の息子の相続です。
未成年者は相続権はありますが、自ら相続権を行使することができません。
そこで必要となるのが、未成年者の代わりに相続を行う特別代理人です。
民法第826条では「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない」となっており、遺産相続では妻の取り分が増えれば子の取り分が減り、逆もまたしかりなので、母と子の利益が相反するため特別代理人が必要となるのです。
特別代理人を選出しないでなされた遺産分割協議書は無効とされ、妻だけで作った遺産協議書の内容が「妻だけが遺産の全てを相続する」といった場合は当然に無効とされますが、「子供だけが相続する」という内容であっても無効とされます。
特別代理人の選出は裁判所が決定
特別代理人は相続に関係のない第三者から選ばれます。
裁判所に特別代理人候補を申し立てて、通常その中から選ばれるのですが、弁護士など候補者に入っていないものから選出される場合もあります。
特別代理人は、候補者の年齢・職業・経歴などの外に、未成年者の経済状態・家庭状況、未成年者と代理人の関係性、未成年者の希望などを鑑みて決められます。
候補者が他の相続人と関係があり未成年者が不利益を被る可能性が高い場合は、除外される場合もあります。
例えば相続人が再婚の妻と妻の連れ子(養子縁組あり)と先妻の子の場合、先妻の子の特別代理人を妻の親類を候補者にしようとしても、妻に有利な遺産分割となる懸念があるため、裁判所の認可が下りない可能性が大きいです。
死亡事故の場合は加害者側から支払われる損害賠償金が数千万円となり、他の相続物と合わせて1億円を超えることも珍しくないため、弁護士に死亡事故の示談交渉を任せるだけでなく、未成年者の相続の特別代理人となってもらうと、示談交渉から相続までスムーズに行きます。
また、相続人が未成年者のみの場合は、親権の未成年後見人を誰にするかの問題が発生する可能性も高いため、なおさら早い段階での弁護士への相談をお勧めいたします。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
死亡事故の遺族は、葬儀や示談・遺産相続など多数の手続きが必要となってくるため、弁護士にアドバイスをもらいながら手続きを進めていく方が良い。
家族が死亡事故に遭った場合の示談のタイミングは、遺産相続が始まった際に始めるか、加害者の懲罰をどのようにしたいかを遺族が考えて行うとよい。
被相続人に多額の借金がある場合には相続放棄をすることが多いが、死亡事故の場合には保険会社の保険金請求権も放棄してしまうことになるため、相続放棄する前に弁護士に相談した方が良い。
被害者に落ち度のない死亡事故でも過失があると言われたら、弁護士に依頼して事故の調査をして、正しい過失割合を主張するほうが良い。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。