死亡事故の被害者遺族に対して支払われる慰謝料について
死亡事故の場合、逸失利益や死亡慰謝料が支払われますが、あくまで死亡した本人に対するもので、遺族が受け取っているのは「相続により被害者の財産を受け継いだ」という形なのです。
損害賠償請求はそもそも、加害者と被害者との当事者同士間の問題であり、被害者家族と言えども加害者から直接的な被害を受けているわけではないので、損害賠償が発生するわけではありません。
そのため、死亡事故の遺族からは不満の声が出るのですが、遺族に対しては「被害者の近親者の慰謝料」が支払われます。
自賠責の基準では、支払われる親族の範囲は、両親(養父母を含む)・配偶者・子になります。
請求権者が1人の場合で550万円、2人の場合は650万円、3人以上の場合で750万円となり、請求権者の中に死亡事故の被害者から扶養を受けていた者がいる場合には、200万円がプラスされるため、最大で950万円が遺族に対する慰謝料となります。
その他の親族でも慰謝料が認められる可能性もあるが…
しかし、家族の形態によっては「両親が仕事で不在がちなので、祖母に育ててもらったようなものなのに」というような祖母と孫の関係や、「両親が亡くなっていて、幼いころから兄弟で助け合ってきた」と、世間一般と比べて濃密な兄弟関係の場合もあります。
このような場合の慰謝料ですが、裁判所の判例を見るとかなり消極的であると言えます。
ほとんどの判例で、死亡事故の被害者と慰謝料を請求した近親者が同居していることが前提とされ、さらに特殊な事由が必要とされています。
つまり、同居している単なるおばあちゃん子といったレベルでは、裁判所は慰謝料の対象外としています。
仮に特別な関係性が立証できたとしても、60万や多くて300万円といった金額に留まるため、遺族の中には大変不条理な判決と受け取ることが多いです。
日本の場合は全般的に「慰謝料」に対して金額の評価が低く、離婚裁判や名誉棄損、公害訴訟などにおいても、慰謝料の金額だけを見ると世間が考えている額よりも低額と言わざるをえません。
親族の慰謝料請求だけのために、弁護士を雇って裁判を起こすというのは、かなりのハイリスクであるとともに、費用倒れの傾向が高くなります。
そのため、死亡事故全ての損害賠償請求の中に、親族の慰謝料も含めて請求するというのが一般的になります。
親族の慰謝料について疑問を保険会社に問うたとしても、ほぼ門前払いの状態だと言えますので、疑問があるのならば弁護士に相談をした方が良いでしょう。
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交通死亡事故の被害者遺族が民事訴訟するメリットは、損害賠償金の上昇や加害者の重罰化などがあるため、民事裁判をした方が良いこともある。
死亡事故で亡くなった人と特に親しい近親者は、近親者慰謝料を請求できる可能性があるが、近親者慰謝料を請求するには、精神的な苦痛を受けたことを実証する必要があるため、弁護士に相談するほうが良い。
交通死亡事故となった場合、相手側の保険会社から葬儀代が支払われることもあるので、事前に保険会社に確認をした方が良い。
死亡事故は、物損事故や人身障害事故とは異なり、被害者本人が損害賠償請求をする事ができない。誰が被害者に変わって請求できるかというと、遺族が請求する事になる。
死亡事故の近親者慰謝料は、民法で父母、配偶者、子と定められているが、類推適用により、それ以外の近親者でも慰謝料を受け取ることが可能である。