未成年の死亡事故に対する逸失利益の計算方法は?
死亡事故による損害賠償金の中で、大きなウエイトを占めるのが死亡慰謝料と逸失利益になります。
逸失利益とは、「死亡事故で亡くなった方が生きていれば得られたであろう利益」の事を指し、一般的には死亡時の給料で計算がされます。
そのため、死亡事故の被害者の年齢が若いほど、給料が高いほど、逸失利益の額が大きくなると言えます。
しかし、死亡事故に遭われるのが給与所得者(サラリーマン)や事業主など、現役で働いている人だけとは限りません。
特に未成年の学生などは収入がないことがほとんどですので、しばしば逸失利益に関して加害者と被害者遺族との間で意見が対立することがあります。
判例では、18歳以下の未成年の場合には賃金センサスと言われる「賃金構造基本統計調査」による、18歳以下の最終学歴、高校卒業の労働者の平均賃金をもとに計算されます。
死亡事故の被害者が大学生の場合には、大学卒の平均賃金が適用されます。
しかし、同じ高校生でも工業高校に在学していて卒業後は地元企業に就職を予定していた者と、進学校に入学して大学入試に向けて勉強をしていた者とでは、将来的な就職は大きく違っていたはずです。
裁判でも、死亡事故の被害者が高校生であったが、大学に進学していた可能性が高いとして、大卒の賃金センサスで逸失利益を計算するよう命ずる判決が出たものもあります。
18歳未満の未成年の場合はライプニッツ係数の考え方が違う
平成28年度の賃金センサスでは未成年である18歳、高卒の年収は、242万9千円です。
もし、死亡事故の被害者が平均寿命まで生きていたとすれば、定年の65歳までは働くことが出来たので、65-18=47年間の給料が逸失利益になります。
単純計算で、2,429,000円×47年=114,163,000円となるのですが、ここで出てくるのがライプニッツ係数です。
仮に114,163,000円を一括で支払った場合、銀行などに定期預金すれば複利計算で増えていくことになります。
それではあまりにも被害者に有利過ぎることになるため、「毎年年収分を引き出し、残りは年5%の複利計算で増やしていきながら、65歳など所定の年齢にすべてなくなるように初めに支払う金額を調整する」と、裁判所が認めています。
この減算させながらの複利計算はややこしいため、ライプニッツ係数と言われる係数が使われます。
仮に18歳ならばライプニッツ係数は18.169になりますので、2,429,000円×18.169=44,132,501円が実際の金額になります。
さらに、生活費控除と言われる、死亡事故の被害者のために使われたであろう生活費は除外されて支払われるため、実際には3~4割減となります。
さらに被害者が18歳未満の未成年の場合には、18歳になる年齢までは逸失利益に関しては手つかずで5%の複利で増やしていくと考えるため、さらに支払われる逸失利益は少なくなります。
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未成年者の死亡事故の場合は、成年の損害賠償金の計算方法とは異なるため、その点で加害者と意見が対立することがあるので、弁護士を通じて示談を進める方が良い。
死亡事故に遭った場合、賠償金の一種として逸失利益を請求できる。しかし、生活費控除や過失割合、ライプニッツ係数等を考慮しつつ算出する事が必要で、専門家である弁護士に依頼するのが安心である。
子どもが死亡事故に遭った場合、最終学歴で逸失利益が大きく変わってくるため、遺族と加害者側で将来的な進学状況について争われることがある。
賃貸オーナーの場合、収入は所有する不動産が生み出しているため、死亡事故で亡くなったとしても、逸失利益が認めてもらえないケースもある。
死亡事故となった場合に、今後得られるはずだった収入を請求する逸失利益は、収入全てをもらえる訳ではない。そこには控除される項目があるため、確認しておくべきである。