死亡事故の被害者が無職の場合、逸失利益は支払われるの?
死亡事故で支払われる保険金で、死亡事故の被害者が同じ年齢であっても大きな差が生まれるのが逸失利益です。
逸失利益とは「死亡事故の被害者が生存していれば得られたであろう利益」という意味で、通常は死亡事故当時の年収と平均余命から算出されます。
つまり、死亡事故に遭った当時の年齢が同じ男性であれば、年収に比例して逸失利益の金額が決まるということになります。
素直に考えれば、年収200万円の男性と年収1000万円の男性であれば、生涯年収は5倍の差があると考えられますので、当然と言えば当然です。
しかし、長い人生で転職活動中の無職の期間や、病気で療養中の期間もあることでしょう。
そういった、「無職」の期間に死亡事故に巻き込まれた場合には、逸失利益の計算はどうなるのでしょうか?
無職でも逸失利益が0円とは限らない
基本的に無職の場合は、逸失利益の計算の元となる年収が0円のため、逸失利益は0円になります。
しかし、親の遺産があり働かなくても生活ができるから無職の人と、会社のリストラによる再就職活動中で無職とでは、事情が大きく異なります。
保険会社は死亡事故の被害者が無職の場合には、画一的に逸失利益を0円と計算しますが、裁判所の判例を見るとそうではありません。
先程あげた例のように、資産がありそれで生活をしている場合には逸失利益を認めませんが、再就職活動中であったり、病気療養中であっても完治後は再就職していたと思うに足りる状況であれば、逸失利益を認める判決が出ています。
極端な例を言うと、交通事故に遭い半年間意識不明で会社を解雇となり、その後死亡した時点では無職であったために、逸失利益を認めないかと言うとそれはありません。
そもそも、死亡事故に遭わなければ会社を解雇されることもなかったのですから、死亡時点での就職の有無だけで逸失利益を決めてしまうのは、乱暴だと言えます。
では、就職活動中や病気療養中で無職の方の逸失利益の計算はどうなるかというと、専門性の高い特殊な職業にしか就職できる可能性がないなどの特別な事例を除いて、賃金センサスに基づき年収が算出されます。
賃金センサスは、国民の年収の平均を、性別・年齢・最終学歴に分けて分類したもので、それを使えば「40歳大学卒の男性の平均年収は431.4万円」と、容易に算出することができます。
しかしながら、保険会社が死亡事故の遺族の希望を汲んで逸失利益を支払うことは稀ですので、保険会社との交渉が難航している場合には、弁護士に相談するのが無難と言えます。
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ご家族が死亡事故に遭われると、正常な判断ができなくなる可能性があります。抜けのないよう、損害賠償を全て請求するためにも、その種類についてはしっかりと把握しておく事が大切です。
死亡事故では、加害者と被害者遺族間で、過失割合でもめることが多く、わずかな過失割合の差で金額が大きく変わるため、紛争となることもある。
賃貸オーナーの場合、収入は所有する不動産が生み出しているため、死亡事故で亡くなったとしても、逸失利益が認めてもらえないケースもある。
保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
死亡事故の被害者に既往症や持病がある場合には、保険会社が余命の減算をしてくることがあるが、判例では健常者と変わらない余命計算がされることがほとんどである。