高齢者の死亡事故、年金受給者か否かで補償内容が変わる?
日本の高齢化社会に伴い、年金の支給年齢が上がる一方で、大手企業では50代で早期退職を募るところもあり、一口に高齢者と言っても様々なライフスタイルがあります。
高齢者の死亡事故というと、被害者が年金暮らしという人が多いです。
年金生活の高齢者が死亡事故に遭った場合、年金を収入とみなすのかということがしばしば議題となります。
実際、年金が生活費の収入として大きなウェイトを占めていることもあり、年金を収入とみなして逸失利益が計算されます。
しかし、給与所得者と大きく異なるのが、生活費控除です。
生活費控除とは「収入のうち、死亡事故の被害者が生きていた場合に、被害者自身のために使われたであろう生活費は、逸失利益から控除する」というものです。
つまり、被害者が生きていれば食費や電気代などの生活費がかかりますが、死亡事故以降はその分が減少するため、その分は差し引くということになります。
年金生活者の場合、給与所得者よりも生活のために消費される金額が、年金支給額に対して割合が多いため、生活費控除が高めに計算されます。
高齢の給与所得者の場合は?
定年退職の後に再雇用されて、年金ではなく給与で生活をしている高齢者もいれば、自営業をずっと営んでいる高齢者もたくさんいらっしゃいます。
そういった高齢者が死亡事故に遭った場合の逸失利益の計算は、30歳40歳といった現役の給与所得者の逸失利益の計算方法と同じになります。
年収×ライプニッツ係数(平均余命による係数)-生活費控除=逸失利益
となります。
ただ、高齢ということもあり、65歳以上のライプニッツ係数は約7~1.8(高齢になるほど下がる)となるため、逸失利益が予想していたよりも少ないということもあり得ます。
死亡事故の高齢者の中で厄介なのが、無年金者で無職の方です。
年金を払っていなかったなどの理由で、年金の受給資格がない場合には、当然年金収入はありません。
収入がないため通常ならば職に就いていると考えるのですが、配偶者の給料や年金で生活していたり、子と同居していて生活の心配がないといった方もいます。
こういった方は当然ながら逸失利益は0円となるのですが、専業主婦の場合には意見が分かれることがあります。
専業主婦自体には逸失利益を認められているが、無年金者に対しては逸失利益が認められないと相反するからです。
このような場合には、どの程度配偶者や子供のために家事をしていたかということが重要視され、「自分の身の回りのことだけしていた」という程度では、逸失利益が認められることはほとんどありません。
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死亡事故では、被害者が生存していないため、自身で損害賠償の請求などの対応はできない。そうなると遺族の対応が求められるため、何をしていく必要があるのか、しっかりと把握するべきである。
死亡事故の示談交渉を代理人に頼む場合には、弁護士を代理人として選ぶのが一番問題が起こりづらく、最適であると言える。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。
子どもが死亡事故に遭った場合、最終学歴で逸失利益が大きく変わってくるため、遺族と加害者側で将来的な進学状況について争われることがある。
死亡事故のように損害賠償額が大きくなったり、加害者との争点が生まれたりしそうな場合ほど、弁護士の力が求められる。その時、できる限り交通事故に強い弁護士を選ぶのが望ましい。