介護人の死亡事故で残された被介護人の補償はどうなるの?
死亡事故の被害者には様々な人たちがおり、中には家族の介護をしていた人もいます。
日本の高齢化社会においては、「妻が夫の」「息子の嫁が息子の両親の」といった従来よく見られた関係以外にも、「夫が妻の」「孫が祖父母の」、中には「親が子供の」と逆転した立場のものまで見られます。
介護を受けている立場の「被介護人」からすれば、介護人を死亡事故で亡くすことは、介護が受けられないために生活の質を落とすだけでなく、生命の危険性もあるため、被介護人の処遇が問題となります。
死亡事故で介護人が亡くなった場合でも、被介護人に対して特別な補償が発生することはほとんどありません。
死亡事故の一番の被害者であるのは死亡した本人であるため、本人に対しては死亡慰謝料などの保険金は支払われます。
さらに専業の家事従事者と介護人を兼ねていた場合には、自賠責基準で日額5,700円、裁判所基準であれば8,000~10,000円の逸失利益が認められます。
つまり、介護人の逸失利益を使えば、被介護人に対する介護は継続して行えるということになりますので、被介護人がいることに対して特別に厚遇をする必要がないとも考えられるからです。
実際には保険会社と紛糾するケースも
しかし、これはあくまで「理想論」であり、現実問題は違います。
保険会社が支払う保険金は、死亡事故の法定相続人が法定割合に沿って分割されることが多いです。
そのため、被介護人の配偶者が亡くなり、法定相続分の1/2の金額では将来的な介護費用が足りないことが明白であったり、介護人が被介護人の子どもではあるが、介護人に子どもがいるため、被介護人は相続権すら持たないということもあります。
このような場合、他の相続人が被介護人の介護費用のことを考えてくれればいいのですが、「扶養義務はないから、お金がないなら生活保護を受けて、施設にでも入ってくれ」というようなケースが往々にして発生します。
介護には労力も金銭もかかり、それぞれに事情を抱えていることもあるため、一概に相続人が非人情であると断罪することはできませんし、法律的にも違反しているとは言えません。
そのため、介護人の死亡事故の場合には、普通の死亡事故よりも問題を多くはらむ可能性が高く、裁判所に訴えたとしても被介護人にとって一番良い判決が出るとは限りません。
死亡事故でこのような問題が起きると予想されるのならば、相続人同士の話し合いに弁護士を介入させることをお勧めします。
法定通りの相続になるかもしれませんが、被介護人が利用できる公的サービスや制度を提示することにより、相続人の態度を軟化させることも出来るかもしれませんので、一度相談をしてみると良いかもしれません。
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保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
交通死亡事故で労災認定を受けた場合には、労災と自動車保険の両方を利用する方が、受け取れる保険金の合計額が多くなることが多い。
死亡事故の賠償金を受け取る人は、亡くなった被害者から賠償請求権を相続した相続人である。死亡事故により相続が発生したら、弁護士に相談することが望ましい。
死亡事故の損害賠償請求は、亡くなった方の相続人が行う。複数の相続人がいる場合は、相続人の代表者が加害者側の保険会社と示談交渉することになる。
ご家族が死亡事故に遭われると、正常な判断ができなくなる可能性があります。抜けのないよう、損害賠償を全て請求するためにも、その種類についてはしっかりと把握しておく事が大切です。