死亡事故での運行供用者責任による重み
交通事故が起こったときには事故の責任は運転手が負うのですが、場合によっては自動車の所有者や勤めている会社が運行供用者責任を問われることがあります。
以前は、死亡事故などの重大な交通事故が起きても、加害者の運転手が失踪するなどして逃げてしまうと、被害者はどこにも被害者請求をすることはできませんでした。
そのため、悪質なタクシー会社や運搬会社は、死亡事故を起こした運転手を即日解雇して、被害者から連絡があっても「運転手は辞めたので、会社は一切関係ありません」と、知らぬ存ぜぬで通していました。
しかし、交通事故の被害者救済から、運行供用者、つまり運転手が運転することにより利益を受ける者や運転を監督できる者に対して、運転手と同じように責任を負わせると言う、「運行供用者責任」が制定されました。
つまり、自動車の所有者や雇用している会社が、交通事故の時に運転手が損害賠償を被害者に払えない場合には、運行供用者責任として代わりに支払いなさいと言う事になります。
一般家庭でもあり得る運行供用者責任
「会社勤めの会社員が勤務中に起こした事故や、タクシーやトラック会社の運転手にしか適用されないのでは?」と思われますが、一般人でも運行供用者責任が問われるケースがあります。
よくあるのが、子供が父親名義の自動車を運転中に、交通死亡事故を起こしたケースです。
通常ならば自動車保険から保険金が支払われるケースですが、加入していたのが年齢制限がある保険で支払いの対象外であったり、任意保険に加入しておらず自賠責保険の金額では損害賠償金額に満たない場合などは、運転手が支払わなければなりません。
しかし、子供が学生などで支払い能力がない場合には、自動車の所有者である父親にも損害賠償を支払う責任が生じるのです。
「休日に友達に自動車を貸した」「正月に里帰りしてきた姉が、買い物に行くのに自動車を借りていった」「自動車が盗難にあい、犯人が運転中に死亡事故を起こした」と、良くあるシチュエーションでも運行供用者責任が問われる可能性があるので、いつ自分が死亡事故の運行供用者責任として巻き込まれるか分からないと言えます。
そのため、数年前に京都府亀岡市で起こった小学生や妊婦を巻き込んだ死亡事故では、自動車の所有者は運転手の知人であったため、あまりにも重大な死亡事故の運行供用者責任を所有者に課せることができるか、死亡事故でも殺人罪の立証で保険会社の支払い義務がなくなるのではないかと、様々な議論がわき出ました。
運行供用者責任があっても、必ずしも損害賠償が支払われるものではないことを、被害者も知っておく必要があります。
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公務員が死亡事故を起こした場合、禁固刑以上の判決が下されると解雇となってしまうため、十分な弁済をしてもらえない危険性がある。
家族が死亡事故に遭った場合、警察や保険会社、あるいは葬儀社とのやりとりをしなければならない。それらの負担を抑えられるメリットがあるため、弁護士へ依頼するのもひとつの手段である。
保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
死亡事故による慰謝料は、本人に対する慰謝料と近親者慰謝料があるが、近親者慰謝料を積極的に請求することにより、遺族の悲しみを訴えて慰謝料が増額する可能性がある。
家族が死亡事故に遭った場合には示談交渉を行うが、損害賠償請求権の時効は事故日から5年である。しかし、提訴や催告、承認などで時効の更新(中断)を行う事が出来る。