遷延性意識障害となった場合に発生する成年後見人の問題とは
交通事故の被害者が遷延性意識障害となった場合には、必ず成年後見人の問題が上がってきます。
そもそも成年後見人とはどういったものかというと、家庭裁判所が認定する法定後見制度が関係してきます。
法定後見制度とは『認知症等の精神的な障害で判断能力に欠ける状態が通常の方を、保護・支援する制度』です。
一般的に法定後見制度が使われるのが認知症の高齢者で、判断能力の低下につけ込んで高額な契約をしたり、この1人のみに有利な遺言書を書いたりなどすることを防止し、被後見人の財産を守る時に使われます。
法定後見制度で保護される方を『被後見人』、代わりに財産を守ったりする人は『(成年)後見人』等と呼ばれます。
法定後見制度は、『後見』『保佐』『補助』の3つに分かれています。
『補助』は、民法13条1項(借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為)の中で、家庭裁判所が定めるもののみ補助人の同意が必要となります。
『補佐』は補助よりも強力で、民法13条1項に定めるもの全て、補佐人の同意が必要になります。
『後見』は最も権利を有し、『被後見人の財産に関するすべての法律行為の代理権』と『被後見人の日常生活に関する行為以外の行為の取消権』を持ちます。
つまり、後見人は『同意』ではなく『権利』が与えられているため、被後見人と後見人で判断が分かれても、『被後見人は正常な判断が下せないため、被後見人の利益が侵害されない範囲では後見人の意見が優先される』こととなります。
強力な権利を有す法定後見人
遷延性意識障害患者は、自己で意思表示や判断をくだすことができないため、代わりに財産管理を行い、法律行為を行う、成年後見人が必要となります。
交通事故で遷延性意識障害となった場合には、多くのケースで加害者側から多額の損害賠償金が支払われるため、その財産管理を行う成年後見人が必要になります。
それにくわえて、交通事故の示談は本人の代わりに成年後見人が行わなければならないため、示談前に成年後見人を定める必要があります。
また、遷延性意識障害患者で関連してくるのが、治療・療養のための契約等です。
遷延性意識障害患者の多くは、遷延性意識障害の状態を脱することが難しく、時として一生涯入院・療養施設への入所、もしくは自宅療養を余儀なくされます。
そのため、入院であれば病院と、療養施設であれば療養施設と、入院・入所のための契約を結ばなければなりません。
遷延性意識障害患者自身が契約を結ぶことは不可能であるため、成年後見人が代わりに行う必要があります。
自宅療養であっても、訪問看護を受けたり、医師による往診、介護器具の購入・レンタル契約など、成年後見人の決定が必要なものが多々あります。
これらのことから、交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、成年後見人の手続きは避けられないのですが、家庭裁判所への手続きや交通事故の示談など、煩雑で専門的な知識が必要となる物が多いので、弁護士に相談をされる方が良いでしょう。
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遷延性意識障害患者は、自身で加害者や保険会社に対して被害者請求を行えないため、成年後見人を選定する事が必要である。ご家族でも良いほか、相談している弁護士に任せる手段もある。
遷延性意識障害の後見人と実質の介護を行う家族が違う場合には、家族の意に沿わない示談を代理人が行ってしまう事もあるので、事前に弁護士に相談をして示談方針を固めておく方が良い。
遷延性意識障害の方には成年後見人の選任が必要なことが多いですが、弁護士に依頼する場合などでは毎月、報酬の支払いが発生する。総額としては大きな費用で、損害賠償に含められる。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
症状固定後は加害者に治療費は請求できないが、遷延性意識障害の場合、将来的な治療費や介護費を示談時に請求することができるため、弁護士に相談するのが望ましい。