上半身にのみ麻痺症状がでる中心性脊髄損傷について
脊髄損傷と言うと麻痺の症状がつま先から、重症であればあるほど体の上の方まで麻痺の症状が広範囲に現れると思われがちですが、脊髄損傷の種類によっては下半身には麻痺症状が現れず、上半身にのみ麻痺症状が現れることがあります。
そもそも脊椎内の脊髄は神経の束ともいえるものなのですが、輪切りのようにして見た場合、外側に下半身の神経、内側に上半身の神経が集中しています。
完全に脊髄が切断された場合には下半身の麻痺が必ず現れるのですが、一部だけ損傷した場合には損傷された個所により、麻痺が出る場所が変わってきます。
多くの脊髄損傷は脊髄の外側が傷つくことが多いため、下半身麻痺の症状が多く現れますが、脊髄の中心部分のみが損傷してしまった場合には、上半身のみに麻痺の症状が現れることがあります。
この症状は中心性脊髄損傷と言われ、脊髄損傷の中でも珍しく、また発見しづらいと言われています。
肩が上がらない原因が中心性脊髄損傷の場合も
交通事故直後に下半身、特に歩行が困難な状態が認められると、医師も脊髄損傷を疑いCTやMRIなどの綿密な検査が行われますが、歩行が可能な状態で上半身の麻痺が原因で肩が上がらないといった症状であれば、医師であっても「交通事故の打撲による痛みで、一時的に腕が上がらないだけ」と、診断をくだしてしまうこともあります。
しかし、1週間たっても1か月たっても症状が改善せずに、肩が上がらないと医師に訴えても下半身に麻痺症状が出ていないため、精密検査をしてもらってやっと中心性脊髄損傷が分かるといったケースもあります。
さらに難しいケースでは、中心性脊髄損傷の箇所が微小すぎてMRIやCTなどでは発見されず、原因不明、もしくは詐病と疑われるというものまであります。
交通事故の怪我の治療費を支払っている保険会社からすれば、「中心性脊髄損傷である」との医師の診断がある場合には、治療費の支払い対象になるかもしれませんが、原因不明、詐病との診断を下された場合には、治療費の打ち切りも考えられるため、脊髄損傷患者にとっては大きな不利益をこうむることになります。
また、腕が麻痺しているといった場合でも中心性脊髄損傷でも、脊髄から腕にかけての間の神経が切断されている場合でも同じような症状であるため、判断が付きづらいこともあります。
さらに、神経の切断ではなく体内の血腫が腕の神経を圧迫していることが原因で、血腫が時間とともに体内に吸収されたり、手術で取り除くことで改善するといったこともあります。
医師も一度「単なる打ち身」と思い込んでしまうと、他の原因に目がいかないこともあるため、精密検査を受け直すかセカンドオピニオンとして交通事故に強い医療機関で診療してもらうのも一つの手段になります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
脊髄損傷では麻痺がある部分に痛みやかゆみなどを感じる幻肢痛という症状が出ることが多くあるため、幻肢痛で日常生活に支障が出る場合にはその分を含めた損害賠償請求をした方が良い。
交通事故の後日に脊髄損傷が判明しても、交通事故との因果関係の証明が難しいケースもあるため、弁護士に相談をした方が良い。
交通事故が原因で脊髄損傷を負った場合、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうべきである。
脊髄損傷の診断は麻痺、しびれの確認、MRI等の画像診断で特定し、損傷箇所は、C・T・L・Sで部分を、番号で骨の場所を表す。ダメージの度合いは完全損傷と不完全損傷に分かれる。
脊髄損傷の診断ではMRI等の画像が重視される。発見が難しい場合もあるため、早期に専門医を受診する事が大切である。神経学的検査や電気生理学的検査でのサポートも可能なため、検査を行うと良い。