脊髄損傷では損傷箇所によってどんな支障が生じるの?
交通事故などで脊柱に強い力が加わることで脊椎を損壊し、その中にある脊髄が損傷を受けるのが脊髄損傷です。
脊柱は上から頸椎(C1-7)、胸椎(Th1-12)、腰椎(L1-5)、仙椎(S1-5)、尾椎に分けられ、損傷箇所が丈夫であるほど障害レベルが高くなることが知られています。
具体的に脊髄損傷箇所によって、どの器官にどんな支障をきたすのかを確認しておきましょう。
例えば第三頸椎であるC3は横隔神経を支配しており、ここが損傷を受けると自発呼吸ができなくなって人工呼吸器を用いることになります。
上腕二頭筋を支配するC5が傷つくと、自力では腕が曲がらなくなります。
手首に関しては、C6の損傷で手首の背屈が、C7の損傷で屈曲ができなくなり、指を曲げることができなければC8が損傷しています。
C6が損傷したときには、上腕二頭筋は収縮するものの上腕三頭筋は収縮しないために、肘が自力で伸ばせなくなります。
続いての胸椎Th1までが手指に関連し、指の開閉運動に支障をきたします。
ここまでは運動神経に関する損傷箇所ですが、Th2より下では感覚神経に関係します。
Th4なら乳首周辺、Th10では臍部、Th12では鼠径部の感覚に支障が出ます。
胸椎の上部は腹筋背筋を支配しているため、ここが損傷すると体幹の保持が難しくなります。
下部胸椎から腰椎の損傷では両下肢が麻痺し、車いすを使用することとなります。
仙骨以下の損傷では排泄や勃起機能に障害をきたし、排泄が自力では出来ず介助が必要です。
頸椎損傷者の障害の実例
上記のような障害は神経が完全に分断される完全型の場合であり、不完全型の場合はそれぞれの損傷度合いに応じて感覚や運動が残るところもあります。
例えば、損傷箇所がC6(第六頸椎)で、損傷度合いが完全損傷の方の場合、四肢麻痺、体温調節機能と排泄機能の喪失という後遺障害が残りました。
頚髄損傷者は必ず、指を動かす行為に何らかの障害を持つことになります。
この方の場合、手は常時握りこぶしをつくったままの状態ですが、まっすぐ伸びきったままや、ゆるく握ったままになるケースもあります。
完全損傷なので自分でお尻を持ち上げることも、立っていることもできません。
さらに、感覚がなくなった箇所では皮膚呼吸も発汗も行われないために、体温調節ができません。
排泄機能については、自己導尿はできるもののやはり介助が必要な状態ということです。
このように脊髄損傷となり、腕の一部、胸から下の機能が全て失われた状態でも、車いすでのバスケットボール競技に参加したり、仕事をしながら福祉関連の資格を目指しているといいます。
脊髄損傷によって起きる障害と向き合い、前向きに生活している方もいるのです。
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仙骨の脊髄損傷では、主に臀部から足裏、つま先にかけての麻痺が起こり、排尿障害なども起こることがある。
脊髄損傷のなかでも頚髄が損傷すると、自律神経障害がみられることがある。症状として体温調節機能の低下や血管運動神経の障害、異常疼痛や異所性骨化などがみられる。
腰椎に脊椎損傷が起きると、足の麻痺や排尿障害などが起こりやすいが、不完全型の脊髄損傷で軽微な障害であると、脊髄損傷であることが見過ごされてしまう危険性がある。
交通事故による脊髄損傷は、症状に応じて後遺障害等級が分かれる。慰謝料に大きく影響する部分であるため、具体的な症状と等級を照らし合わせ、把握するのが望ましい。
自賠責保険の運用変更で、以前から脊髄損傷でまひがあっても、交通事故で新たにしびれが生じた場合には、弁護士に示談交渉を依頼すれば新たなしびれに対する分の請求をすることができる。