脊髄損傷以外の麻痺の原因、脊髄圧迫について
交通事故直後に、体が動かないという事はまれにあります。
「身体が動かないという事は、脊髄損傷なのでは?」と思ってしまうことがありますが、実際には脊髄損傷でなくても体が麻痺したように動かないという事があります。
特に、交通事故直後に体が動かない理由はいくつかあり、すぐ回復するものから後遺症が残るものまで様々で、大まかに4種類のケースがあります。
一つ目は、交通事故のショックから体がうまく動かないというものです。
交通事故はいわば「非日常の出来事」なので、交通事故に遭ったという心因的なショックから、体がこわばってしまい動かないという事があります。
人は恐怖を感じると立ちすくんでしまうことがありますが、それと同じで安心感を得ることで普通に動けるようになったり、徐々に交通事故のトラウマから立ち直り少しずつ動けるようになるという事があります。
2つ目は、痛みなどから動けないというものです。
怪我や打撲・骨折などにより痛みがひどすぎて体が動かないという事がありますが、これらは怪我や骨折が回復するにつれ、体を動かすことができます。
3つ目は脊髄や神経の圧迫による麻痺です。
脊髄損傷は神経の通り道である脊髄が損傷(断裂)してしまうため、脳からの命令や逆の感覚器官から脳への信号が途絶えてしまい、麻痺がおこります。
神経の圧迫が麻痺を起こす
しかし、脊髄損傷でなくても、神経の通り道である脊髄が圧迫されると麻痺がおこることがあります。
脊髄が骨折して背骨と背骨の間が狭まり上下に押しつぶされたようになったり、骨折した骨片が脊髄に接触したりなど、脊髄自体には損傷がなくても圧迫されることにより、脊髄内の信号が途切れたり、間違って送られたりすることがあります。
この場合、脊椎の骨折が治ることによって回復することもありますが、場合によっては骨折した個所にプレートとボルトを入れて上下の圧迫をなくしたり、脊髄を圧迫している骨片を取り除くなどの手術が行われることがあります。
脊髄損傷とは違い、脊髄や神経の圧迫では圧迫している箇所を解放することにより劇的に改善することがあり、一般的には手術後、数日から数週間のリハビリを経て、運動機能が回復しますが、早い人では手術直後から麻痺から解放される人もいます。
4つ目は脳に損傷があるパターンです。
脊髄損傷が「神経組織内の伝達が正しくできない」事による麻痺なのに対して、脳に損傷がある場合は「脳から正しい命令が出せない」という事なので、交通事故の状況によっては脳だけが損傷して体が動かないという事もあります。
このような症状は、高次脳機能障害と言われるもので、さらに重篤なものは遷延性意識障害と言われ、専門的な治療が必要となります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
脊髄損傷で意識がないと、遷延性意識障害と混同されることがあるが、遷延性意識障害は脳の障害であるため、全く別のものになる。
交通事故で下半身麻痺の脊髄損傷を負った場合、車いすの購入費用を加害者側に請求できるが、購入前にいろいろと試してから購入した方が良い。
脊髄にかかる衝撃が保護している範囲の限界を超えると脊髄を構成する神経が傷ついて脊髄損傷になる。脊髄損傷となった場合には、まずは弁護士へ相談するのが望ましい。
不完全脊髄損傷の場合、運動機能の麻痺以外の神経障害が起こる可能性があるため、示談前にそういった体の不調が無いか確認をする必要がある。
脊髄損傷の症状は、完全麻痺やしびれなどが代表的なものではあるが、痛みや温冷を感じなくなるなどの感覚異常や、排尿や排便が困難になるなどの様々な症状がある。