脊髄損傷で使用する医療器具購入の費用請求について
交通事故による脊髄損傷で下半身に障害が出ると、歩行が困難となることがあります。
そのため交通事故での示談の際に、杖といった歩行補助道具や、車いすなどの費用を請求することがあると思います。
自宅で重度の脊髄損傷患者を介護される場合には、介護用ベッドや除痰器、場合によっては人工呼吸器などが必要になってきます。
これらのものは安いものではなく、リースにされている方も多いかもしれませんが、「ずっと必要ならば購入した方が良い」と考える脊髄損傷患者や家族もいらっしゃいます。
その際に悩まれるのが、このような医療器具の費用を請求する方法です。
購入のために見積もりを取っている状態であれば、購入金額や見積金額を請求すればよいですが、すでに購入済みであったり、5年10年と長期間故障せずに使えるとは考えづらく、適時に買い替える必要があります。
しかし、示談時に将来的な購入費用の必要性に気が付かず、後で買い替える時になって「しまった!」と、思われる方も多くいます。
医療器具は耐用年数から計算する
では、医療器具などの費用請求はどうするかというと、耐用年数から計算をします。
例えば、脊髄損傷患者の平均余命が30年であったとします。
車いすの耐用年数は6年なので、患者の生存中に5回購入することになります。
仮に車いすの購入費用が10万円だとすると、合計50万円が必要になります。
では、保険会社に50万円を全額請求ができるかというと、そうではありません。
保険金支払いの考え方の中に、「毎年など、一度にではなく定期的に支払うべき金銭を一度に先払いする場合には、銀行などに預けて複利で運用し、最終的に複利でついた金利も併せてその金額になればよい」としているからです。
この複利計算には複雑な計算式が使われるため、現在は5%複利のライプニッツ係数が使われています。
初年度に10万円の車いすを購入し、残りの29年間で4回購入するとして考えると、ライプニッツ係数を用いた計算からは、4回の購入に対する費用は23万円ほどとなります。
つまり、車いすに対する費用は将来的な費用を含めても合計で33万円となります。
医療器具によって耐用年数が違うことのほかに、脊髄損傷患者の余命、症状の重篤さによる必要な器具の数などにより、数百万円単位で請求金額が変わる可能性もあるため、もれなく請求をする必要があります。
とはいえ、初めて交通事故に遭い、しかも家族が脊髄損傷という重い後遺症を負われて、冷静に示談交渉を進める事が出来る方が少ないため、弁護士に医療器具の費用も含めて交渉をしてもらう方が良いでしょう。
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交通事故で下半身麻痺の脊髄損傷を負った場合、車いすの購入費用を加害者側に請求できるが、購入前にいろいろと試してから購入した方が良い。
交通事故による脊髄損傷で車いすなど歩行器具が必要となった場合には、将来的な買い替えも含めて加害者側へ費用を請求することができる。
脊髄損傷は損傷の程度により、足先の痺れや、下半身麻痺であったりと症状にばらつきがある。交通事故による怪我が原因で生活が困難になった場合、リフォーム費用を加害者側に請求できる可能性がある。
交通事故により脊髄損傷を負い、歩行困難となった場合には、移動に必要な杖や車いすの購入費用のほかに、福祉車両や民間救急車などの移動手段についても請求できることがある。
家族が交通事故で脊髄損傷になっても、家族が介護のために仕事を辞めるのではなく、介護休業法を利用して介護をしながら仕事を続けることも可能である。