脊髄損傷患者の自宅看護を選ぶ理由
交通事故で脊髄損傷となられた方の症状は、「首から下が麻痺していて、人工呼吸器が必要」な重篤な症状から、「つま先にピリピリとした違和感がある」といった軽微な症状もあり、「誰ひとり同じ症状の脊髄損傷患者はいない」とまで言われています。
そのため、自宅看護と言っても、「家の各所に手すりを設置する」くらいから、「ベッドに寝たきりの状態の脊髄損傷患者の世話を付きっきりでする」と、かなり幅があります。
患者本人の脊髄損傷の程度が、車いすで移動できるまでのレベルであれは、ほとんどの場合家庭での自宅看護をされます。
寝たきりで食事の世話や人工呼吸器の使用が必要なレベルであると、自宅介護が病院での介護か悩むところではありますが、あえて自宅介護を選ぶ方も多くいらっしゃいます。
住み慣れた自宅で、気の置けない家族の看護をする方が、患者も家族も精神的な負担が少ないと言う事もあります。
また、交通事故であれば保険金でまかなえることもありますが、病院に入院となると毎月の入院費が必要となるほか、今の医療制度だと3か月で転院を余儀なくされるため、自宅看護だと経済的な負担が少ないだけでなく、転院問題にも頭を悩ます必要がなくなります。
自宅看護の問題点
一見して患者にも家族にも良いように見える自宅看護ですが、問題点がいくつかあります。
1つが、看護するのは看護師などの専門者ではなく、素人の家族が行うことです。
脊髄損傷患者を家に迎えるにあたって、介護やリハビリのやり方を学ばれるとは思いますが、初めからすべてがうまくゆくことは稀ですので、初めは試行錯誤で月日を経て慣れていくことになります。
その中で、患者に対して間違った対処をしてしまったり、反対に患者ができることまで看護人がしてしまったりと、専門職からの見解だとNGであることもあります。
このような場合には、週に何回かヘルパーなどの専門の方に来てもらい、日常的なケアのアドバイスをもらったり、病院の診察時に質問をしてみると良いでしょう。
2つ目は、精神的なケアです。
住み慣れた自宅とはいえ、自宅看護をしていると脊髄損傷患者や看護をしている家族は、同じことの繰り返しで変化の乏しく閉塞感を覚えることがあり、それがストレスとなります。
患者にとっては交通事故で脊髄損傷となっただけでも大きなショックであるので、患者の精神的なケアはもちろん必要ですが、それを支える家族メンタルケアも必要になります。
ホームヘルパーを雇い、その間患者の方はヘルパーと車いすで散歩をしてもらい、家族の方は外出して買い物などをしてもらったり、看護施設への1週間程度のショートステイをして患者は自宅ではしづらい入浴などのケアを受け、家族はその間に休息を取ってもらうなどの方法をとるようにしましょう。
「脊髄損傷患者を自宅看護する場合」に関してのみんなの質問
父が交通事故で脊髄損傷となり、胸から下が完全麻痺の状態なのですが、今度の退院を機に自宅看護を検討しています。
ですが、自宅の改装や看護に関しては素人同然ですので、不安がたくさんあります。
その中でも自宅看護を始めたものの、看護がうまくできず新たに入院先を見つけなければいけなくなった際に、受け入れてくれる先があるかどうか不安です。
そう考えると、初めから自宅看護ではなく、病院に入院を続けてもらった方が良いのではないかとも思います。
脊髄損傷患者の場合、ずっと入院している方が良いのでしょうか?
重度の脊髄損傷患者の場合、長期に入院される方もいますが、麻痺の度合いが下半身から下で腕の動きが日常生活に支障がないレベルで動かれる方は、ほとんどの場合自宅看護をされています。
自宅看護の脊髄損傷患者であっても、定期的な通院または往診が必要となるため、入院施設のある病院に通院するか、往診をしてくれる医師が入院施設のある病院と連携していると、体調を崩したときなどで入院が必要となった場合にも、安心できるでしょう。
交通事故で脊髄損傷となった夫が、自宅看護を強く希望しています。
私も毎日病院に通って看護するよりも、住み慣れた家で看護できればと考えています。
そのため、交通事故の加害者の保険会社に、看護のための自宅改装費や看護費用などを請求していますが、私が高齢であるなどの理由から、それらの費用に関しての支払いを認めてくれません。
この場合、弁護士を通して請求すれば支払ってくれるのでしょうか?
交通事故で脊髄損傷となった被害者が保険会社との示談が済む前に、実際に自宅看護している場合でも、保険会社が自宅看護の費用を認めるとは限りません。
自宅看護が認められるためには、医師から患者の自宅看護の許可が下りている、住環境が看護に適している、看護する人に看護技術があり健康状態に問題がないなど、多くの条件をクリアする必要があります。
そのため、「脊髄損傷患者が自宅看護を望んでいる」ということだけでは、保険会社は支払いを拒否することが多く、裁判でも不利な判決が下りることも多いため、事前に弁護士に相談をした方が良いでしょう。
2年前に交通事故で脊髄損傷となった夫を、半年前から自宅看護しています。
夫は脊髄損傷のため、かろうじて腕が動きますが、食事などは全て私が介護しています。
ですが、私も持病があり介護が続けられるか不安であり、自分がもし入院したら夫の世話をする人がいないと考えると、気が休まりません。
このような場合、公的な補助を受けることはできないのでしょうか?
脊髄損傷患者が65歳以上である場合には、介護保険の適用があるため、介護認定のランクにより、訪問介護や訪問入浴などのサービスが受けられます。
また、介護を行う家族の入院や冠婚葬祭での遠方地への出張などの期間中、脊髄損傷患者を療養施設にショートステイできるものもあります。
64歳以下の場合は介護保険が使えませんが、自治体が独自に補助制度を制定していることもありますので、自治体の窓口や地域包括支援センターに相談してみることをお勧めします。
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脊髄損傷による介護費用の請求は、脊髄損傷の重篤度により認められるときもあれば、認められないケースもあるため、事前に弁護士に相談して確認をした方が良い。
交通事故で脊髄損傷を負い、被害者が介護の必要な状態に陥った場合、将来的な介護費用を請求すれば認められる可能性がある。正当な理由を主張するためにも、弁護士に相談してみるとより安心できる。
医師が脊髄損傷患者の介護が必要と判断した場合、例え身内が介護をしたとしても、介護費用を請求できる。仮に職業介護人を雇った場合も、負担した費用の請求が認められる。
交通事故で脊髄損傷となった患者が車いすを用いて室内移動をするのは困難であるケースがあるため、外出用とは別の移動手段を考慮する必要がある。
脊髄損傷患者を家族が介護をした場合でも、加害者に対して介護費用の請求ができるケースもあり、将来的な介護費用も請求できることがある。