脊髄損傷となった場合、成年後見人制度は利用できる?
10年ほど前の法改正により、成年後見人制度が施行されました。
日本も高齢化の波が押し寄せ、高齢の方の財産管理に関して問題が出てきたことが背景にあります。
高齢の認知症患者の中には、介護を受けるだけの十分な資産を持っているが、本人が認知症であるため介護の契約を結ぶことができないということが多くありました。
そのため、本当ならば公的なサービスが受けられるにもかかわらず、本人の意思確認が取れないために介護を受けられないことがないように、弾力的な制度として生まれたのが「成年後見人制度」です。
成年後見人制度は、認知症や遷延性意識障害などで、本人が正しく判断が出来ない、もしくは意思確認ができない場合に、成年後見人と言う人が本人の代わりとなって、介護の契約を結んだり、財産管理ができるといった制度です。
以前ならば配偶者や子供にこういった権限がありましたが、成年後見人制度ができてからは、配偶者と言えども成年後見人を差し置いて、被成年後見人に関する契約をしたり、財産を使うことは許されません。
脊髄損傷となった場合、 成年後見人制度は利用できるのでしょうか?
脊髄損傷で成年後見人の指定には高いハードルが
交通事故で、重度の脊髄損傷を負われた患者の中には、発語能力が失われたり、意思確認が難しい人もいます。
こういった重篤な脊髄損傷患者は成年後見人制度を利用して、被成年後見人とした方がいいかというと、一概には言えません。
1つは発語などの表現能力が乏しくても、思考能力には問題がないような場合では、成年後見人の適用は好ましくないことがあります。
また医師から「脊髄損傷患者の判断能力に問題なし」と診断がおりると、成年後見人制度が認められる可能性は低くなると言えます。
2つ目は、成年後見人の手続きには費用と時間がかかる点です。
成年後見人制度は悪用すれば他人の財産を自由に使うことができるため、裁判所も認定には慎重を期する時があります。
成年後見人の手続きの間は、交通事故の保険会社との交渉も実質的にはストップしてしまうため、被害者や被害者家族が早期の示談を望んでいても行うことはできません。
また、示談の時効が迫っている場合には、成年後見人の手続きが完了する前に時効を迎える可能性もあるため、交通事故により脊髄損傷となったのに、最悪の場合、保険金が支払ってもらえなくなります。
3つ目が、成年後見人が必ずしも希望する人になるとは限らない点です。
成年後見人は配偶者や子供がなることが多いのですが、配偶者が高齢であったり、子どもが住んでいるところが遠方地であったりすると、成年後見人としてふさわしくないと裁判所が判決を下すことがあります。
そうなると、裁判所が指定する弁護士であったり、日常的に介護をしている人が成年後見人となることもありえます。
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交通事故による脊髄損傷の裁判で保険金が高額な判決となるのは、弁護士が脊髄損傷に関する請求を正しく計算し直すからである。
脊髄損傷の保険金は、症状の重さにより数十万円から時として億となる事もあるが、個人的に交渉をした場合には、保険会社の基準の最低限に近い金額しかもらえないため、弁護士に依頼をした方が良い。
ライプニッツ係数は、交通事故による脊髄損傷の損害賠償に係る逸失利益や介護費を計算するうえで非常に重要な係数で、民法の改正により5%から3%へと変更された。
脊髄損傷患者を家族が介護をした場合でも、加害者に対して介護費用の請求ができるケースもあり、将来的な介護費用も請求できることがある。
交通事故による脊髄損傷で弁護士に依頼する際には、契約書で依頼の範囲や内容をよく確認する必要がある。