脊髄損傷の独特の痛みとはどんなもの?原因は何?
完全脊髄損傷の患者は、損傷個所により「首から下」や「腰から下」の部位に麻痺が起こります。
脊髄損傷により麻痺している個所は、触っても触られている感覚がないことが多くあります。
そのため、「触っていても分からないし、痛みも感じないんでしょ?」と言われる方が多いのですが、脊髄損傷独特の痛痒に悩まされる患者も決して少なくありません。
日常的に脊髄損傷患者の介護をしている家族ですら、患者が痛みを訴えていることが理解できないことから、患者に心無い言葉をかけてしまうケースがあります。
脊髄損傷独特の痛痒や脊髄損傷で多くみられる痛みを良く知っておくことで、脊髄損傷をより理解できると思います。
脊髄損傷による痛みは神経信号のエラーが大きな原因
皮膚で感じた痛みや冷たいなどの感覚は、神経を電気信号という形で伝わり、脳が受け取って初めて「痛い」「冷たい」と感じます。
脊髄損傷では、その電気信号の通り道の神経が切れているのですから、痛みや冷たさなどを感じないというのは、医学的に正しいです。
しかし、人間の身体は機械のようにON・OFFと神経を簡単に切り替えられるものではありません。
一例を言うと、交通事故などで足を切断した患者の中には、切断した後も足の感覚があり、切断して足は無いにも関わらず「足の甲が痛い。ふくらはぎがしびれる」といった痛痒を訴えることが多いです。
これは「ファントムレッグ」と言われる症状で、脳の勘違いが引き起こした幻の痛みだとされています。
脳の勘違いは脊髄損傷でも起きるのがわかっており、本来ならば感じることがない麻痺している個所に痛みや不快感をおぼえることがあります。
よくあるのが、指先に針で刺すような痛みを感じたり、腱を打ち据えたわけでもないのに鈍痛が起こったりということがあります。
また、脊髄損傷により自律神経が乱れ、低血圧や高血圧を引き起こします。
低血圧の場合の症状は、めまいや立ちくらみといったことが多いのですが、低血圧による内臓の酸欠により胸や腹部に痛みを訴えることがあります。
高血圧の場合、様々な箇所で痛みを引き起こします。
片頭痛は「血管拡張型頭痛」、つまり頭部の血管の血圧が上昇することにより引き起こされるのですが、原因をたどると脊髄損傷であることがあります。
特に不完全脊髄損傷の患者に脊髄損傷独特の痛痒が発生すると、痛覚が麻痺していない分、激しい痛みと感じることがあります。
こういった痛みにはロキソニンやイブプロフェンなどの鎮痛剤が効くことがありますが、効きが悪い・全く効果がないといった場合もありますので、医師と相談の上治療をした方が良いでしょう。
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脊髄損傷は、脊椎(背骨)の中にある神経の束である脊髄が完全断裂したり、部分断裂をした状態である。脊髄損傷は腰の軽い違和感から首の下が全く動かないなどの症状の重篤さがかなり違う。
脊髄損傷となった場合、体の傷が治癒し始めると早急にリハビリ計画が立てられ、リハビリをしていくことになる。麻痺をした部分であってもリハビリテーションの有用性がある。
不完全脊髄損傷の場合、足に麻痺が出ずに、腕や指に麻痺が出ることがある。その場合、麻痺の原因が脊髄損傷と気づかれず後遺障害認定がされないこともあるので、セカンドオピニオンを受け方が良い。
脊髄損傷の症状は、完全麻痺やしびれなどが代表的なものではあるが、痛みや温冷を感じなくなるなどの感覚異常や、排尿や排便が困難になるなどの様々な症状がある。
脊髄損傷で意識がないと、遷延性意識障害と混同されることがあるが、遷延性意識障害は脳の障害であるため、全く別のものになる。