脊髄損傷と遷延性意識障害の違いとは?
大きな交通事故直後は被害者の方の意識がないことがあり、まさしく「命の危機」となる事があります。
幸い命を取り留めたとしても、全身マヒに陥ったり、意識が戻らないことがあります。
これらの症状は一見するとベッドで寝たきりになっているため、医学的な知識のない人からは「植物状態なの?」と言われることがあります。
しかし、医学的には明確な区別があるため、全く別のものになります。
脊髄損傷は、脊椎内の脊髄が傷ついている症状を指します。
脊髄は脳からの命令を体の各器官に届け、皮膚や四肢などの感覚(痛覚・冷たい熱いなど)を脳に伝達します。
脊髄損傷が起きると信号が送られず・脳に伝達も届かないため、麻痺状態となります。
脊髄損傷も上の部分で損傷するほど、体の麻痺部分が大きくなり、損傷部位によっては呼吸困難で死亡することもあります。
脳自体には損傷がないため患者本人の思考は正常であることが多く、寝たきりのように見えても、器具などを使用して意思の疎通を行うことも可能です。
ですが、脊髄は再生不可能な組織であるため、身体機能の完全な回復に関しては期待できません。
遷延性意識障害は脳の障害
一方、遷延性意識障害は脳機能の障害となります。
脳は場所により司っている体の部分が違うため、呼吸や内臓機能を担当している部分が損傷していると、脳死してしまいます。
逆に、生命維持の部分に損傷がなく、記憶や意識の覚醒・身体機能の部分で脳に障害がある場合には、遷延性意識障害と呼ばれます。
遷延性意識障害の場合、身体機能自体に障害がない場合も少なくなく、脳の障害がなくなると劇的に症状が回復するケースがあります。
よくテレビ番組で、「10年間意識不明で寝たきりだった患者の意識が戻り、今ではバスケットボールをするまで回復」と言ったような内容のものがありますが、ほとんどが遷延性意識障害の患者であると思われます。
そのため、脊髄損傷と遷延性意識障害とは全く違うものであるとわかると思いますが、事故直後はどちらかわからない場合もあります。
事故直後は、頭部の殴打により脳浮腫が起こり脳波が乱れることがありますが、治療を進めると落ち着いて回復することがほとんどです。
また、患者に意識がない状態であれば、患者自身に体の違和感や麻痺があるか問うことができないため、麻痺が起きているかわからないこともあります。
稀に、交通事故で遷延性意識障害と脊髄損傷の両方を受傷するケースがあります。
この場合には、加害者側との補償において大きくもめる可能性があるため、弁護士を介して交渉をすることをお勧めします。
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脊髄損傷では麻痺がある部分に痛みやかゆみなどを感じる幻肢痛という症状が出ることが多くあるため、幻肢痛で日常生活に支障が出る場合にはその分を含めた損害賠償請求をした方が良い。
脊髄損傷の後遺症には頭部に出るものもあり、顔面神経麻痺や頭痛などが症状として現れることが多い。
脊髄損傷であっても麻痺などの症状がない場合には、後遺障害認定を受けることは困難である。
脊髄損傷でまれに上半身麻痺が起こることがある。珍しい症例のために脊髄損傷との因果関係に気付かない医師もおり、示談が不利になるケースもあるため、交通事故に詳しい弁護士に相談をするとよい。
脊髄損傷の診断は麻痺、しびれの確認、MRI等の画像診断で特定し、損傷箇所は、C・T・L・Sで部分を、番号で骨の場所を表す。ダメージの度合いは完全損傷と不完全損傷に分かれる。