症状が出ない脊髄損傷の場合、後遺障害認定は受けられる?
交通事故で脊髄損傷となった人の中には、麻痺やしびれといった脊髄損傷の症状が出ない人がいます。
脊髄は神経の束ですので、スパッと切れてしまった完全脊髄損傷の場合には、必ずどこかしらに障害の症状が出ます。
しかし、脊髄の一部が切断する不完全脊髄損傷の場合には、損傷個所によってはMRIやCTなどで脊髄損傷の箇所が見つかっているにもかかわらず、障害の症状が出ないということがあります。
脊髄の損傷個所によって、「身体のどの部位にどのような症状が出るか」というのは、医学的におおよそ解明しています。
あえて「おおよそ」としたのは、脊髄や、脊髄から延びる神経根は個人差があるため、全く同じ体型の二人の人間が、寸分たがわぬ場所に不完全脊椎損傷を負ったとしても、一方は麻痺で足が動かないのに、一方はまったく障害が出ないということもあります。
特に脊髄の中心部分の不完全脊髄損傷の場合、症状が全くでないことが多くあります。
自覚症状がない脊髄損傷は後遺障害にあたらない?
交通事故の後遺障害認定の点から脊髄損傷をみた場合、最低でも12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの(※画像その他により、原因が医学的に証明できるもの)」に該当します。
さらに、首から下の完全麻痺などでは後遺障害認定の介護1級や介護2級に認定されることもあるため、脊髄損傷の症状によっては12級よりもさらに重い等級に認定されることがあります。
こうしてみると、脊髄損傷の症状が出なくても脊髄損傷が医学的に認められているのならば、後遺障害認定は受けることができると思ってしまいますがそうではありません。
先程の12級13号の後遺障害認定の条件は、「局部に頑固な神経症状を残すもの(※画像その他により、原因が医学的に証明できるもの)」ですので、大原則の条件である「局部に頑固な神経症状」がないため該当しません。
つまり後遺障害の認定には、「後遺障害の症状の医学的な診断」と「後遺症が出ている原因が医学所見・画像所見で証明されている」との両方が揃わないと認定されないのです。
ですが、「今は脊髄損傷の後遺症が出ていないだけで、あとになって後遺症が出て困るのではないか」という不安があると思います。
しかし、脊髄損傷の場合は損傷後すぐに症状が出ることが普通で、1カ月や2カ月経って症状が出ることはまずありません。
もし、それだけ遅れて症状が出た場合は、保険会社の方が「脊髄損傷の症状はすぐに出るはずなので、それだけ遅れて出るのは交通事故以外が原因である」と認めないため、どちらにしても後遺症と認定されるのは非常に難しいといえます。
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脊髄損傷では麻痺がある部分に痛みやかゆみなどを感じる幻肢痛という症状が出ることが多くあるため、幻肢痛で日常生活に支障が出る場合にはその分を含めた損害賠償請求をした方が良い。
脊髄損傷の後遺症には頭部に出るものもあり、顔面神経麻痺や頭痛などが症状として現れることが多い。
レントゲンやMRIなどの画像所見がない場合、医師が脊髄損傷と診断していても裁判所が認めない場合もあるため、裁判をする場合には事前に弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷になったら、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして後遺障害診断書に添付する証拠を集め、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうのが望ましい。
脊髄損傷の診断は麻痺、しびれの確認、MRI等の画像診断で特定し、損傷箇所は、C・T・L・Sで部分を、番号で骨の場所を表す。ダメージの度合いは完全損傷と不完全損傷に分かれる。