懲罰的に交通事故の加害者へ慰謝料請求の裁判をできますか?
【質問】
先日、交通事故に巻き込まれたのですが、加害者に誠意が見えず憤慨しています。
交通事故の状況は私が横断歩道を歩行中に、よく見ずに左折してきた加害者の自動車にはねられたというものです。
自動車から降りて怪我をして倒れている私を確認したにもかかわらず、逃げようとしたのですが、まわりの人から止められて自動車から引きずり降ろされたと警察から聞いています。
その後も、加害者が加入していた保険会社からは連絡がありましたが、入院している私のところには一切見舞いに来ず、謝罪の電話や手紙すらも一切ありませんでした。
身体的な怪我はもちろん、大きくは目立たないですが顔にも怪我の跡が残り、毎朝化粧でカバーしなくてはならず、憂鬱で仕方がありません。
「加害者本人から謝罪が欲しい」ということを保険会社に言っていますが、加害者は免停で、裁判も略式起訴で済んでいると聞いていて、交通事故から1年近く経ちますが加害者からの謝罪がいまだにありません。
刑事裁判は終わっていますが、加害者を懲らしめるために高額な慰謝料を請求する民事裁判をしようかと思っています。
このように、懲罰的に高額な慰謝料請求を目的とした裁判をすることは可能でしょうか?
【回答】
交通事故の場合、人身事故に対する罰を決める刑事裁判と、損害賠償や慰謝料請求のための民事裁判の2つが行われることがあります。
刑事裁判は検察庁が加害者に対して行うため、被害者が積極的に参加を申し出ないと、検察庁と加害者だけで結審してしまいます。
逆に交通事故の民事裁判のほとんどが、被害者が加害者を訴えるというものです。
交通事故の民事裁判では慰謝料などの請求金額が注目されますが、交通事故被害者の多くは金額よりも加害者への懲罰的な意味で裁判をされます。
そもそも、加害者が被害者や被害者家族と誠実に向き合って謝罪していれば、訴訟まで行くことは少ないです。
世間では「高額の慰謝料請求をして、お金儲けなのか?」とうがった見かたをされる方もいますが、多額の慰謝料で訴えることにより、加害者に交通事故に対する罪の重さの自覚をして欲しいという方が大半です。
とはいえ、5億、10億といった突飛な慰謝料請求は裁判所自体が訴状を受け取らない可能性が高く、実際に裁判となっても敗訴となってしまい、結果的には被害者の利益になりません。
事前に弁護士と相談の上、判例や前例などから予想しうる最高額の慰謝料より何割か上乗せをして示談交渉を行い、和解もしくは裁判である程度歩み寄って決着させるというのが現実的だと言えます。
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交通事故で当事者同士以外の第三者に損害を与えた場合には、過失割合に応じた補償をしなければいけない。
交通事故の保険金支払いの基準は、低い順から「自賠責保険基準」「保険会社基準」「裁判所基準」があり、金額の差が数倍となる。
保険会社自身が交通事故の解決のために弁護士に依頼するのは、交通事故の調査のほかに、契約者もしくは相手側に問題があることがある。
交通事故の加害者に損害賠償金以外の要求をしたい時には、刑事裁判の被害者参加制度を使い、被害者家族の心情の陳情をしたらよい。
交通事故の後遺障害認定に不満がある場合には、異議申し立てをすることができるが、書類の内容が良くないと異議申し立てが通らない事の方が多い。