知人の車に同乗中の交通事故。保険金が減額されるのはなぜ?
【質問】
いつもは電車で通勤しているのですが、残業のため最終電車を逃してしまい、一緒に残業をしていた同僚が自動車で送ってくれることになりました。
ここ2週間ほど年度末ということで仕事が忙しく、私は最終電車ギリギリまで残業していましたが、同僚は深夜に帰ったり、時には自動車の中に泊まって翌日も仕事をしていました。
お互いに会社や残業に対する愚痴を言っていたのですが、突然車線変更してきた自動車を避けることができずに接触事故を起こしました。
自動車は大破したものの、幸いなことに私も同僚も体の方は軽いむち打ちと、打撲、ガラスによる切り傷程度で済みました。
同僚からは「搭乗者傷害保険と人身傷害特約をかけているので、保険を使って交通事故の治療してくれていいから」と加入している保険会社の担当に電話をしてくれて、連絡先のメモももらいました。
しかし、数日後保険会社から連絡があり「同乗者であるあなたにも交通事故の過失が有ることがわかり、保険金は減額して支払います」と連絡がありました。
同僚の運転を邪魔した記憶はなく、話も軽い雑談程度で運転が出来ないほどでなかったと思います。
この場合、保険金の減額を受け入れなければいけないのでしょうか?
【回答】
同乗者のいる交通事故では、しばしば同乗者の運転手への損害賠償請求権が問題視されます。
一般的に運転手の好意から同乗した者でも、運転手に対して交通事故の損害賠償請求ができるとの判決が出ています。
しかし、同乗者はいかなる場合にでも、運転手に対して満額の損害賠償請求ができるかというと、そうではありません。
同乗者の行動によっては、損害賠償請求額の減額の対象となることがあります。
1つは運転手に対して危険運転を煽る行為をした場合です。
具体的には「スピードをもっと出せ」「ガンガン車線変更して、追い抜いて行け」「前の車が遅いから、車間距離をあけずにぴったりとつけろ」といったような言動です。
これらの運転は、道交法違反の危険運転ですので、それを煽る言動は教唆罪に該当するからです。
運転手がそれに従って交通事故を起こした場合には、同乗者にも責任があるとみなされるのは自然な流れと言えます。
もう1つが、運転手が正常な運転が出来ず、交通事故を起こす危険性が高いことを、同乗者が知っていた場合です。
「運転手が無免許である」・「飲酒をしていた」・「薬物を乱用している」といった状態なのですが、日常でもあり得る「過労状態であった」「風邪で高熱が出ていた」「花粉症の薬を飲んでいて眠気があった」という状態も含まれるため、意外と該当するケースがあります。
質問者の場合も、同僚が過労状態であるのを知っているのにもかかわらず、同乗したというのが減額の原因となった原因だと考えられます。
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自動車に無償で同乗する好意同乗であっても、近年では好意同乗を理由に同乗者への減額はされない傾向が高い。
運転手が飲酒運転をしていることを知り、同乗していて事故に遭った場合、保険会社から支払われる保険金は過失減額されて支払われることになる。
交通事故の同乗者であっても、危険運転致死傷幇助罪に問われると、事故の責任を負わなければいけないため、相手側から損害賠償請求を受けることがある。
交通事故の示談を加害者と直接した場合には、保険会社から保険金が支払われなくなるため、直接の示談はしない方がいい。
軽傷であった交通事故の示談では、弁護士に依頼することで入通院慰謝料を弁護士基準まで引き上げて増額できる可能性がある。費用の詳細はケースバイケースで弁護料は弁護士によるので比較検討が必要となる。