介護の為に会社を退職。交通事故の損害賠償請求はできる?
【質問】
2か月前に専業主婦であった妻が交通事故に遭い、胸から下の完全麻痺の脊髄損傷を負いました。
腕や首はかろうじて動くものの、車いすに座っても力が入らず、ずり落ちそうになるなど、常時介護が必要な状態です。
今はまだ病院に入院していますが、妻が家に帰ってきても介護が出来る人間がいないどころか、小学生の子供が二人いるため、今でも仕事・妻の介護・家事・子供の世話とギリギリの生活になっています。
思い切って、私が会社を辞めて主夫をしながら妻の介護や子供の面倒を見た方がいいのかとも思いますが、そうなると収入が一切なくなってしまうため不安で仕方がありません。
保険会社との交通事故の示談の話し合いの時に、私が会社を辞めて収入がなくなる代わりの損害賠償をすることができるのでしょうか?
出来ないようであれば、どのような交渉をしたらよいのでしょうか?
【回答】
交通事故で後遺症が残った場合には、治療費や慰謝料の他に様々な形の損害賠償請求が出来ます。
1つは、自宅介護をするための、自宅のリフォーム代です。
現在住んでいる家が介護に向かず、バリアフリー住宅に引っ越す際の引っ越し代も含まれます。
2つ目は介護用ベッドや杖、車いすなどの介護用品の購入代です。
公共交通手段が使えないため、福祉車両を購入する費用も認められることがあります。
3つ目が、介護人を雇用するための費用です。
これは看護婦やヘルパーなどの職業介護人を雇用する費用だけでなく、交通事故の被害者家族が介護する場合にも対価が支払われます。
裁判ベースでは職業介護人で一日10,000~30,000円、家族で一日4,000~10,000円で、障害の程度や介護に費やす時間などで決まられます。
そのため、裁判所ベースの平均の8,000円が認められた場合には、介護人(今回の場合は質問者)に対して支払われるため、年292万円が支給されることになります。
4つ目は専業主婦であっても、逸失利益が認められるという点です。
裁判所で逸失利益の計算に使われる賃金センサスでは、主婦の労働対価はおおよそ年365万円になります。
そこから、生活費控除の30%を引いた年255万円が、逸失利益として保険会社に請求できる計算になります。
こうしてみると、夫が会社を辞めたとしても年547万円の保障がされると思いがちですが、これらは弁護士に依頼をして裁判をするか、もしくは判例を持ち出して保険会社を説得できた場合に限ります。
普通、一般人が保険会社と交渉した場合には、介護費を認めても微々たるもので、しかも逸失利益に関しては「主婦は無職と一緒」と認めない事すらあります。
また、夫が会社を辞めたことに対する損害賠償も、「夫が会社を辞めてまで介護をしなければならないのか?仕事を続けて、日中の介護は職業介護人にしてもらえばいいのではないか?」と言う事が争点となるため、なかなか損害賠償は認められないという現実があります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故に遭い、仕事を休むことになり収入的に厳しい場合、仮払金を請求すれば先払いしてもらえる可能性がある。交通事故が原因で生活が苦しい場合には一度、希望を伝えてみるのが良い。
交通事故で入院した場合には、入院にかかる雑費は「入院雑費」として日額で支払われ、必要に応じて付き添い費に関しても支払われることがある。
交通事故の後遺症により自宅のリフォームが必要になった場合には、保険会社からリフォーム代が支払われるので、リフォーム前に保険会社の了承を得ておく方が良い。
交通事故の被害者が治療を続けていると、一定の時期を迎えた時、加害者側の保険会社から治療終了の打診がある。まだ治療を続けたい意思があるのなら、主治医に相談するべきである。
交通事故の示談を加害者と直接した場合には、保険会社から保険金が支払われなくなるため、直接の示談はしない方がいい。