むち打ちと脳脊髄液の減少の関係性について
「むち打ちと脳脊髄液減少症」のコラムで、脳脊髄液が漏れ出して「脳脊髄液減少症」になると、さまざまな不快症状が現れることについてお話ししましたが、脳脊髄液減少症が健康保険で正式な病名とは認められていないことについても触れました。
しかし、脳脊髄液が減少して脳圧が下がる病気「低脳髄液圧症」に関しては、以前からその病気の存在がわかっており、医学上も認められています。
ここで、病名をもう一度よく見てください。
むち打ちが原因で発症するとされる「脳脊髄液減少症」は、脳脊髄液が「減少」する病気で、「低脳脊髄液圧症」は、脳脊髄液が「減圧」する病気です。
減少と減圧では意味するところが違いますが、なぜ病名でそのような違いがあるのかについて説明します。
実は、むち打ちで脳脊髄液減少症になったとされる患者さんの脳脊髄液の圧を測定しても、正常値と変わらないことが多いとされているのです。
一方、病名が確定している低脳脊髄液圧症は、脳脊髄液の圧力が明らかに低下しており、病状との関連性が明らかであるとされます。
低脳脊髄液圧症においての脳脊髄液圧が低くなる原因は、自律神経の障害や体質などが原因とされていました。
なぜなら、脳室が脳脊髄液で満たされるように守っている硬膜はとても丈夫な組織で、外部から少々衝撃を受けたぐらいでは液体が漏れるような隙間はできないはずだからです。
しかし実際には、交通事故でむち打ちになった後で脳脊髄液との関連を疑わざるを得ないような症状が多発しています。
非常に丈夫で穴があくことのないと考えられていた硬膜が、交通事故やスポーツなどによる外傷により隙間ができたとしたら・・むち打ちと脳脊髄液の減少の因果関係ははっきりします。
厚生労働省が脳脊髄液減少症研究のプロジェクトを立ち上げた
むち打ちを発症した交通事故の被害者に脳脊髄液が減少したことによると考えられる症状が多発したため、平成23年に厚生労働省が「脳脊髄液漏出症」と「低髄液圧症候群」についてのみ診断基準を定めました
そして平成28年度4月より、診断基準に該当する場合は保険申請病院で健康保険を使って認可された治療を受けることができるようになったのです。
それと同時に、同じく平成28年4月から厚生労働省が脳脊髄液減少症の非典型例及び小児例の診断・基準・治療法開拓に関する研究を開始しました。
新たに始まった研究は、脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく診断基準作成と脳脊髄液減少症の原因究明を目的としており、特にむち打ち症との関連に焦点を当てています。
交通事故によるむち打ちと脳脊髄液減少症の因果関係を証明することは大変難しいので、まずは弁護士へ相談するのが望ましいです。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
むち打ちは軽い症状と見られがちだが、後遺障害等級の認定が下りる可能性はある。後遺障害等級認定に必要な書類を用意し、ポイントを抑える事が大事である。
交通事故によりむち打ちを負っただけでなく、PTSDにもなった場合、精神疾患であるPTSDが後遺障害として認定される可能性がある。
むち打ちで後遺障害等級が認定されるためには、医師の診断書が重要になる。弁護士に依頼すれば、書類作成や医師との相談においても対応可能である。
むち打ちを簡単に後遺障害認定してもらうことは難しいが、積極的に通院して、事故の直後と最近の画像診断を用意するなどすれば、後遺障害を認められる可能性が高くなる。
むち打ちの治療のために薬が必要となった場合、相手側に請求できるのは医師が診察の上で発行された処方箋の薬の購入費用のみになるため、自己判断で購入した薬は自己負担となり請求できない。