むち打ちの治療のために購入した薬の購入費用は請求できる?
交通事故でその場では痛みがなかったが、家に帰ってから首に痛みが出てきたというケースはままあります。
すぐに病院に行って診察を受けられればいいのですが、「もう診察時間終わっているし、行くのは面倒。」、「整形外科の病院は遠いし、むち打ちなんてすぐによくなるだろう。」、「仕事が忙しくて、病院なんかに行っている暇はない。」と、ついつい後回しにしてしまう人も少なくありません。
そのような場合、家にある鎮痛剤を飲んだり、ドラッグストアに行って湿布を買ってきたりして、その場をしのぐ人もいます。
後々、交通事故の示談交渉になって、「むち打ちの治療のために薬を買ったのだけど、これも請求できるの?」と、疑問に思うのではないでしょうか?
この場合、薬の購入費を加害者側に請求することは非常に難しいです。
そもそもむち打ちを軽視して病院で診察を受けていない場合には、『人身事故』として扱われていないため、物損事故もしくは事故自体がなかったものとして処理されてしまいます。
そのため、『むち打ちの治療のために薬を購入した』と言っても、『人的な被害はなかった』と反論されてしまうからです。
治療中の薬の購入にも注意
では、警察に人身事故として申告し、むち打ちの治療のため病院にも通院していて、薬を購入した場合はどうなるのでしょうか?
通常病院で診察を受けた場合、薬が必要ならば『処方箋』が出されて、病院もしくは院外薬局で薬を処方されます。
処方箋がある場合、診察を受けた上で治療に必要な薬と認められるため、交通事故の相手側に請求することができます。
しかし、「処方された湿布薬だけだと足りない。」、「処方された鎮痛剤はあまり効かないから、市販の鎮痛剤の方がいい。」と、自己判断で購入した場合は医師の指示がないため、薬の購入費は全額自己負担になると思っておいた方が良いでしょう。
処方された薬が足りない、合わないと思った時には、診察の際に医師に伝えて薬を大目に処方してもらったり、別の薬に変えてもらったりするようにしましょう。
まれに弁護士に交通事故の示談の相談に来られた方が、「今までの治療費や薬代の領収書はすべて保管しています!」と、自信に満ちて言われたので領収書を確認してみると、先述の様に人身事故扱いにしていなかったり、ドラッグストアで買われた薬の領収書であったり、健康保険の範囲外の治療で請求できないものであったりして、相手側に請求できないということもあります。
むち打ちだと軽視せず、必ず病院で診察を受けて、必要な薬は医師に相談して処方してもらうのが、示談するうえでも重要と言えます。
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交通事故によって負ったむち打ちの治療中に治療費を打ち切られた場合には、医師に治療の必要性を認めてもらい、弁護士を通じて加害者側と示談するとよい。
交通事故でむち打ちとなったと後から主張しても交通事故との因果関係を認められない可能性があるため、自覚症状がなくとも、交通事故直後は病院に行くべきである。
交通事故後、むち打ちを放置しておくと色んな所に症状が出て治るまでに時間がかかったり、後遺障害等級認定を受けられなくなって賠償金額がダウンしてしまうリスクがある。
交通事故によるむち打ちが原因でうつ病を発症した場合、むち打ちの重症性や治療期間が重視されるため、原因であるむち打ちの医学的な根拠がなければ、うつ病の発症原因と認められる可能性は低い。
むち打ちは、自分の健康保険を使って治療することができる。特に、被害者の過失割合が大きい場合は、健康保険による治療により、受け取る保険金が増えることがある。