むち打ちとなった際の労働能力喪失期間の算出方法
交通事故の後遺症が認められた場合には、後遺障害の等級により労働能力喪失率が決まります。
労働能力喪失率は、「交通事故以前の状態を100とした場合、交通事故の後遺症によりどれだけ仕事が出来なくなったか」と言う事を表しています。
むち打ちの多くの後遺障害等級が14級なのですが、14級ですと労働能力喪失率は5%、つまり95%の仕事しかできなくなったと判断されます。
そして、その5%に対して保険会社は損害賠償金を支払うのですが、ここでさらに問題になるのが労働能力喪失期間です。
労働能力喪失期間と言うのは、あと何年働くことができるかと言う期間で、後遺障害患者の年齢から労働可能年齢の67歳までの期間か、平均余命の半分とされています。
37歳の男性ならば67-37=40年間ですし、70歳男性ならば平均余命の12年を半分にした6年となります。
つまり、年収500万円の37歳の男性が、後遺障害等級14等級に認定されれば、500万×5%×40年=2000万円が損害賠償金となります。
むち打ちの場合には労働能力喪失期間が短縮される?!
しかし、むちうちの場合は、労働能力喪失期間が全面的に認められないことが多いです。
多くの場合は5年か10年を労働能力喪失期間とされるため、実際には短縮されることになります。
なぜこんな計算になるのかと言うと、むち打ちの痛みやしびれは、5年もしくは10年で改善するか慣化すると考えられているからです。
組織再生が不可能な脊椎損傷や四肢切断などは、症状固定の状態から回復するとは考えられないので、永続的に労働能力の喪失が認められます。
しかし、むち打ちのしびれや痛みは、長い年月で少しずつ治ってきたり、痛みやしびれに対して慣れてくるため、永続的な後遺症とみなさないからです。
もちろん、むち打ちの痛みやしびれが一生付きまとい、場合によっては悪化するかもしれませんが、悪化などに関しては加齢によるところが大きいと判断されることがあります。
弁護士の中でも見解が分かれ、「妥当である」という意見もあれば、「慢性的に痛みを感じているのだから、他の後遺症と同じようにするべき」との意見もあります。
裁判所の判例を見ると、むち打ちの労働能力喪失期間を永続的と見るものは少なく、やはり5~10年とするものが多いです。
もし、むち打ちの労働能力喪失期間の短縮に不満がある場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談をしてみると良いでしょう。
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交通事故で負ったむち打ちで後遺障害が認められた場合には逸失利益の請求が出来ることもあるが、馴化を理由に期間を限定されることがある。
交通事故でのむち打ちの治療費の支払いを保険会社から拒否された場合には、弁護士に依頼して保険会社の主張を反証してもらうのが一番良い。
交通事故による死亡者は減っているが、怪我人はそれほど減っておらず、交通事故で怪我をした人の6割はむち打ちになっている。保険会社にむち打ちを否定された場合には、弁護士へ相談するのが望ましい。
交通事故によるむち打ちで適正な後遺障害等級が認定されるためには、必要な要件を満たす医学的な資料を集める必要があり、弁護士に依頼した方がスムーズである。
交通事故でむち打ちになった時、場合によっては休業損害を加害者へ請求する事が可能である。仮に請求する場合には、保証してもらうための必要書類を用意する必要がある。